明日に向けて

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ふげん廃炉の「絶望的な綱渡り」—破綻した核燃料サイクルの象徴

守田です。(20251224 22:00)  明日に向けて(2551)


放射能漏洩が映す構造的問題

2025年12月23日午後、福井県敦賀市にある廃炉作業中の「ふげん」(新型転換炉)で、放射性物質トリチウムを含む水約20mlの漏洩が起きました。法令上の報告対象であり、素早く報じられました。
漏れた20mlは養生されたビニールシート内に留まり、3名いた作業員に被曝はなく、施設外への影響もなかったと発表されています。しかし配管内の残量も明らかにされておらず、より深刻な事態が隠れている可能性もあります。
一見「小さく見える」この事態こそ、問題の本質を映し出しています。量ではなくこの漏洩が起きた文脈が重要なのです。この背後にはふげん廃炉が「絶望的な綱渡り」になっている構造的問題が隠れています。この点を深堀しましょう。

まず第一に今回の事態は「2040年度廃炉完了」という絶対に遅れられないスケジュールと、フランスへの燃料搬出期限(2026年度)という二重のプレッシャー下、作業を急いだ結果のミスだと考えられる点です。今後、作業が本格化すればこうした事態は増えます。
第二に20mlの液体漏洩でも、室内の空気中放射能濃度は急上昇し、明確な危険性がありました。しかも配管内のこの水の残量も明らかにされておらず、より深刻な事態が隠れている可能性もあります。
さらに最大の問題は、この作業がふげんからフランスへの使用済み核燃料の搬出(2026年度期限)という、破綻寸前の計画に縛られている点です。


● 事故の隠蔽はしなかったものの

今回の漏洩が速報されたのは、1997年に「トリチウム漏えい・報告遅れ事故」があったからです。4月に起きた重水約30ℓの配管接合不備による漏洩で、トリチウムが排気筒から大気放出されてしまいました。
この時、ふげんを管轄していた動燃(動力炉・核燃料開発事業団)は、警報が鳴ったにもかかわらず、福井県・国への報告を約30時間遅らせ、しかも当初の内部報告で「異常なし」とするなど、組織的隠蔽を試みました。
この隠蔽は同じ動燃が起こした「もんじゅナトリウム漏れ事故(1995年)」の直後だっただけに、動燃への信頼は完全に失われ、橋本龍太郎内閣が解体を決定して、同組織は現在の日本原子力研究開発機構(JAEA)へと改編されました。

この歴史的不祥事を踏まえて、今回はいち早い報告がなされ、さすがに事故隠蔽は避けられましたが、しかしJAEAなど原子力推進派は、大失敗に終わった「もんじゅ」に比して、ふげんは「成功」だったとの虚構を語っています。
ふげんが新型転換炉(ATR)—プルトニウムとウランの両方を効率よく燃料にできる「日本独自の技術」—だったことを根拠に、「もんじゅ」と違い「ちゃんと動いた」と自賛しているのです。
建設費約700億円で、1979年運転開始、2003年運転終了。25年間運転した実績から「技術実証の成功例」などと自己評価してきたのです。しかし経済的・商業的には完全失敗で、そのことがごまかされています。


● さらに膨大な支出が見込まれている

失敗はコストが高すぎて商用化が断念され、発電を目指した2号機建設も中止したこと。結局、「高くつく実験炉」のままで終わったことにあります。
さらにいま進めている廃炉費用が膨大にかかります。2008年開始、2040年度完了予定の33年計画で、廃炉費用は約2,000億円、建設費の3倍近くになります。
しかもふげんには使用済み燃料731体(うちMOX燃料554体)があり、その全量をフランスに搬出・再処理委託する予定にしているのですが、その費用の数百億〜1,000億円超が廃炉費用に含まれてないのです。

これは原子力予算の勘定科目のマジック=ウソがあります。日本の国策では使用済み核燃料は「資源(資産)」と定義され、「建物を壊す費用(廃炉費用)」と「燃料をリサイクルする費用(再処理)」が別会計にされています。
ふげんの場合、使用済み核燃料再処理費は「研究開発費」「事業費」として別枠計上されていて、国民負担の実態をより分かりにくくしています。
実質的な負担総額は、建設費700億円、廃炉費用2,000億円+フランス委託費350億円(基本契約)+搬出遅延による追加コスト300億円以上+戻ってくる廃棄物の管理・処分費(未定)です。確定分だけで約3,350億円、未定分を含めれば5,000億円超〜天文学的費用になります。

 

● フランス頼みの破綻—満杯のプールと老朽化

しかしそれは廃炉が順調に進んだ場合のこと。計画では使用済みの全燃料を2026年度までに敷地外へ出すことを廃炉の2040年度完了の絶対条件としていて、フランス・オラノ社(旧アレバ)のラ・アーグ再処理工場へ送ろうとしていますが、大きな壁があります。
フランス側も行き詰っているからです。ラ・アーグ再処理工場が経年劣化で限界を迎え、廃液を煮詰める「蒸発缶」に腐食が多発、処理能力が激減しているのです。このため使用済み燃料を保管するプールがどんどん埋まりつつある。
事態はフランス原子力安全局(ASN)が「2030年までにプールが満杯になり全土の原発が止まる可能性」をすら警告するまでになっており、プールの高密度化や新プール建設(2034年以降完成予定)が進められていますが、時間的余裕はほとんどない。

これに追い打ちをかけているのがメロックス工場の停滞です。この工場は取り出したプルトニウムを加工するMOX燃料工場ですが、近年、不良品発生率が上昇し生産量が激減していて、日本でのプルサーマル用の燃料供給もできなくなりつつあります。
このためプルトニウムを燃料として出荷できず、ラ・アーグで再処理すればするほど、使用済み燃料とプルトニウムが溜まる「在庫過多の悪循環」に陥っている。

つまり:
再処理しても → メロックスで加工できず
 → プルトニウムが戻る
 → プールがさらに埋まる
 → 再処理能力低下
 → 悪循環の完成

この状況下で、フランスの原発が止まる事態が近づけば、日本からの委託燃料など受け入れる余裕はない。後回しか、最悪の場合は拒否されるでしょう。
そうなれば使用済み燃料の搬出ができなくなり、冷却システムを止められず、原子炉建屋の本格解体に着手できなくなってしまいます。


MOX燃料再処理は困難、搬出スケジュールは虚構だ

MOX燃料再処理の困難さも大きなネックになっています。MOX燃料は通常燃料よりプルトニウム濃度が高いため、再処理プロセスで臨界してしまうリスクがあり、厳重管理が必要。発熱量と放射線量も強く冷却・遮蔽にもコストがかさみます。
国内の六ヶ所再処理工場は通常の再処理さえできていないし、いわんやMOX燃料の再処理など不可能なので、フランスに「実証研究」名目で委託するしかないのですが、そのフランスもご覧の状態です。
そんな中で当初2023年度開始予定だったフランスへの搬出は、「輸送容器(キャスク)の設計ミス」「フランス側都合(パリオリンピック等)」などの理由で2027年度へ4年延期されてしまいました。

にもかかわらず搬出完了(2031年度)や廃炉完了(2040年度)などの目標は変えられていません。これでは期間を短縮して「一気に運ぶ」無理な前提を置かない限り成立しません。
その上、フランスが受け入れ不可能になれば、ふげん廃炉は完全に行き詰ります。最悪、施設は「事実上の核燃料貯蔵庫」として固定化されてしまいます。そうすると福井県と結んできた使用済み核燃料と核廃棄物の「県外搬出」の約束も破綻します。
少なくとも「2040年度更地化」など、すでに破綻したスケジュールです。


● 再処理できても「負の遺産」が戻ってくるだけ 計画は完全に破たんしている

さらに仮にフランスで再処理が進んだとしても問題は終わりません。国際ルールにより、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)と回収プルトニウムは日本に返還されますが、MOX由来のガラス固化体の管理はより大変だからです。
そもそも通常の使用済ウラン燃料でも、ガラス固化体が天然ウラン鉱石レベルに減衰するまで約10万年を要します。しかし使用済みMOX燃料から発生するガラス固化体はさらに深刻。
プルトニウム239(半減期24,000年)やマイナーアクチニド(アメリシウム241:半減期432年、ネプツニウム237:半減期214万年)の濃度が高いため、「危険性の質が異なる」からです。
発熱量は原子炉取出し後54年時点でウラン燃料由来の約4倍(原子力委員会試算)。冷却期間も50〜100年と2倍必要で、放射線量も高く、最終処分場の面積も2〜3倍必要になる『別格の危険物』です。

つまり350億円を払ってフランスに送り出すのは、処理ができたとしたらですが、数年後に「より手に負えないゴミ」となって戻ってくるだけ。これが「リサイクル」の実態—問題を巨大化させて先送りする悪循環の構造です。
しかもそもそもプルトニウムも「もんじゅ」等で使う予定でしたがすでに廃炉なので使い道などない。日本はすでに国内外に約45トン以上のプルトニウム保有しているので、これ以上増やすと国際的懸念も広がるばかりです。
巨額の費用をかけて「問題の形」を変え、より扱いにくい廃棄物とプルトニウムになって戻ってくるだけで、問題は何も解決されないばかりか矛盾ばかり積もっていくのです。国家事業としては完全な失敗です。


● 結論

その点で20ml漏洩は、極限のプレッシャー下で作業を急がざるを得ない現場の緊張感を象徴しています。自国で処理できない核廃棄物を、他国のパンク寸前の廃棄施設で処理させてもらうという破たん必至の計画の脆弱性が露呈したのです。
まさにふげんは、日本の核燃料サイクル政策の縮図そのもの。選択可能な合理的な道は、この破たんを認め、原子力政策を終わらせることだけです。
20mlの漏洩は、その決断を先送りし続けた代償が、すでに「綱渡り」では済まないレベルに達していることを示しています。

このことを、多くの人々と共有していきましょう。

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【画像・図表について】
※図表: AI生成(Genspark)/ 構成: 守田敏也
※バナー画像: ふげん原子炉写真(JAEA)をもとにAI加工
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