明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

『能力減退症』と向き合い被曝から命を守り抜こう!その1

守田です(20260609 10:00) 明日に向けて(2600)

● 『能力減退症』について解説した動画をリリースしました!

福島原発事故後に起きてきた被曝被害の一端を、三田茂医師の観察と治療の試みを手がかりに考えます。
まずはショート動画をご覧ください。


www.youtube.com

2026年2月に福知山市で行った講演『原爆と原発』より、東電福島原発事故による被曝被害のことを扱った部分を抜き出し、テロップもいれて見やすく聞きやすく編集したものを公開します。
ぜひご覧ください。拡散にもご協力をお願いします。元の動画のアドレスも記しておきます。

youtu.be

このところ、講演などで走り回っています。今日9日午後に大阪で、明日10日夕刻から京都で、コリン・コバヤシさんとのジョイント企画に参加します。大阪ではコリンさんが持ってきて下さった映画の上映も行います。
京都企画はZoomも用意したので聞いていただきたいです。お申し込みは以下から。

forms.gle

コリンさんは国際原子力ロビーがいかにひどい放射線被害隠しをしてきたのかを繰り返し暴いておられます。
それと向き合いながら、この時期に、その隠された被害の実態の一つとしての『能力減退症』について、同時並行で論じることの大切さを痛感しました。
それでサブタイトル入りの動画を作りました。ぜひご覧ください。以下、動画の内容を文字起こしして編集し、リファレンスも示したものを提示します。動画と合わせてご覧ください。


*****

東電福島原発事故による被曝被害の実相

● 東電福島原発事故による放射能汚染の広がり―三田さんが着目した好中球

東電福島原発事故はどうだったのか。なんと、広島原爆の168発分の放射のが出ているのですよ。日本政府の発表。セシウムですね。それでものすごく汚染された。
これは2011年に日本共産党東京都議団が出したマップで非常に優れています。東京がかなり汚染されてることをきちんと告発してくださったものですね。



その中で僕は、東京の小平市にいた三田茂さんという方、今は岡山市に避難移住していますけれども、この方の研究に注目して、一緒になって被曝から命を守ることをしているのですね。それを少しお話ししたいと思います。これを見てください。


三田さんは「電離放射線健診」というものを使ったのです。彼は内科医なのでレントゲンを浴びて、実はかなり被曝しているのですよ。そういう被曝した人は白血球が減ります。なので血液を測って、白血球の度合いを見るのが「電離放射線健診」と言うのです。
それで三田さんは4000人の子どもを中心に診察をして、その中でおかしいと思う人から片っ端から血液を採ってみた。そうしたら白血球には「5分画」と言う5つのものがあるのですけれど、その中の「好中球」が減っていた。
好中球はどういうものかと言うと、細菌(バクテリア)や真菌が入ってきた時に食べるやつです。(ウイルスは食べない) だから免疫力の核心みたいなものです。



2011年の武蔵野のデータを見ていると、平均値の上下に分布している。こういうのは「正常分布」と言うのです。元々人には個体差があります。白血球ももともと多い人、少ない人がいる。だからこんな風に分布するのが普通なのです。
ところが新宿から東側を見ると、明らかに、みんな平均値から下がってしまっているのです。データは5歳以下の子のものが多い。なぜかと言うと、そのぐらいの年齢の子を抱えてるお母さんが心配だからどんどん連れてきたからです。
とにかく明らかに下がってしまっている。恐ろしいです。これが東日本で起きていることです。

好中球が下がるとこの病気になるという一対一的な関係があるわけじゃないですけども免疫力は下がります。
中にはこんな子どもいたのです。好中球ゼロ。このことを僕が京都で初めて話した時に、知り合いの生物学者の方がいて、講演で示した表を見た瞬間に「守田さん、この子死ぬよ」と叫びました。
実際に三田さんも、緊急事態だと考えて、「お母さん、東京を脱出しなさい。西日本に避難移住しなさい」と言ったそうです。それで九州まで逃げたのかな。そしたらなんとV字回復したのですよ。これは避難移住がすごく重要だということを表すものです。


● 『新ヒバクシャ』に『能力減退症』が始まっている

それで三田さんは「『新ヒバクシャ』に『能力減退症』が始まっている」というA4で5枚の論文を書かれました。読んでいただきたいです。アドレスを記しておきます。

『新ヒバクシャ』に『能力減退症』が始まっている 2018年2月28日

http://mitaiin.com/?page_id=519

これをある週刊誌が取り上げてくれたのですよ。どこだと思いますか?文春砲です。取り上げてくれて、こう書いてます。
「物忘れがひどくて疲れやすい。最近増えてる能力減退症はどんな病か」「最近増えてる」のですよ。(記事は2018年4月16日付)

bunshun.jp

文春は「能力減退症」を表にしてまとめてもくれています。主な項目としてこう並んでいる。
「記憶力の低下」「疲れやすさ」「集中力」「判断力」「理解力の低下」「コントロールできない眠気」。
これはなんと広島長崎で言われた「原爆ぶらぶら病」にすごく似てるのです。

「原爆ぶらぶら病」で、被爆者はすごく苦しめられたのですけれども、全く治療されなかったのです。そもそも病と認定されていない。「原爆ぶらぶら病」というのは民間の言葉なのです。
「あいつは原爆を受けたと言っては、ぶらぶらしてサボってる」というところから出てきた言葉で、理解もされないから、より何倍も苦しいのですよね。
実際にそういう苦しみを受けた方がたくさんおられます。被爆二世にも起きています。同じようなことが。

文春が三田医師の話から作成した『能力減退症』についての表 記事QRコードは守田添付

これを文春はとりあげてくれたのだけど、あの方たちは職業的に有名人を尾行しているのですよね。「不倫の現場が取れるといいな」などと思って。
それで「なんか人目を避けているから、これはどこかへ行くぞ」とつけて行ったら、病院に行ってしまうのですって。
それを繰り返してるうちに、「かなりとんでもない病気が蔓延してるぞ」と分かって、三田さんのところに来るようになった。それで、これ出してくれたのですよ。

この記事には「放射能」とは一言も書いてないです。だけど三田さんと僕は「それでいい」と思いました。
まずは人々が危険な状態にあることが明らかになることが大事だから「よくぞ書いてくれた」と思ったら、記者が二度と来なくなりました。これだけでも潰されてしまったのですね。

#能力減退症 #三田茂医師 #被曝から命を守る #新ヒバクシャ #福島原発事故 #内部被曝 #原爆と原発 #避難移住 #子どもの健康を守る #明日に向けて

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
💰 活動継続のため、カンパでお支えいただけたら嬉しいです
ゆうちょ 14490-22666151 モリタトシヤ

http://Paypal https://www.paypal.com/paypalme/toshikyoto/1000

新冊子『プルトニウムは迷走 原発はオワコン 核燃料サイクルは根本的に行き詰っている』をリリース!ぜひ手に取ってください!

守田です(20260606 22:00)明日に向けて(2599)

● 原子力の核心が崩れていることを解き明かしました

新作冊子を6月1日にリリースしました。
この冊子は、原発の危険を論じるだけではなく、原子力政策の核心である核燃料サイクルが根本から破綻していることを示したものです。

2023年、2024年に発行した『原発からの命の守り方2023』『原発からの命の守り方2024』を引き継ぎ、「原発からの命の守り方ブックレット3」としてお届けします。


タイトルは
『プルトニウムは迷走 原発はオワコン 核燃料サイクルは根本的に行き詰っている』
です。


目次は以下の通りです。

第一章 プルトニウムの創造と被害・惨劇の発生
第二章 「平和のための原子力」という神話と核燃料サイクル
第三章 核燃料サイクルはなぜ破綻したのか――技術・安全・コストの限界
第四章 原発推進策の愚かさ
第五章 イギリスとフランスの行き詰まり
第六章 日本の行き詰まり――現場は悶絶している
第七章 原発を終わらせよう

A4判・28ページ、定価1000円。ネットダウンロード版は700円です。
学習会・読書会・配布用のまとめ買いも歓迎します。紙冊子は、10冊で10%引、20冊で15%引、50冊で20%引とします。

お申し込みは以下から

forms.gle


● 核燃料サイクルは根本的に行き詰っている

今回の冊子で私が描こうとしたのは、単に「原発は危ない」ということだけではありません。
もっと核心のところ、すなわち原子力の出発点そのものが何であったのか、そしてその中心にあったプルトニウム生産の論理がいまどう破綻しているのかを、歴史と技術の両面から示すことでした。

原子力の出発点は、ウラン235の核分裂の発見でした。さらに、核分裂しにくいウラン238からプルトニウム239が生まれることが明らかになりました。アメリカはウラン濃縮とプルトニウム生産の双方を進め、核爆弾を作り上げました。そして広島・長崎での大殺戮を実行したのでした。

その後、アメリカは「原子力の平和利用」を掲げました。しかしその中身は、使用済み燃料を「再処理」してプルトニウムを取り出し、それを燃料加工して再び使うという構想でした。いわゆる核燃料サイクルです。
けれどもこの構想は、技術的にも、安全面でも、コスト面でも、何度挑んでも破綻を繰り返してきました。
これを始めたアメリカは1970年代末に撤退し、ヨーロッパでも後退が続きました。2000年代以降にイギリスも撤退し、フランスも深刻な困難に直面しています。日本はなおこの路線に固執していますが、その足場はきわめて危うい綱渡りの上にあります。

つまり、核燃料サイクルは「うまく進んでいない」のではありません。根本的に行き詰まっているのです。
プルトニウムは迷走し、原発はもはや「未来の技術」ではないのです。展望を失い、延命のために危険とコストだけが積み上がる、終わった技術になりつつあります。終わったコンテンツ=オワコンなのです。


● 核燃料サイクルの終わりは原子力政策の終わり!この構造を明らかにしました

私はこの間、日仏協力の実態、フランスの核産業の深刻な混乱、日本国内の現場の苦悶などを追いかけてきました。
その積み重ねを、この冊子ではできるだけ分かりやすく、全体像が見えるようにまとめました。

「核燃料サイクルって、結局どうなっているのか」
「なぜここまで破綻しているのか」
「それでもなぜ推進され続けるのか」

そうした疑問に答えるための、現時点での私なりの到達点です。

原子力を終わらせたい方、核燃料サイクルの破綻をきちんとつかみたい方、学習会や読書会の素材を探している方に、ぜひ手に取っていただきたいです。
また多くの方に広げていただければ嬉しいです。

ご注文は以下のフォームから

https://forms.gle/pZbhHUY44PPYUzWu6

どうぞよろしくお願いいたします。


#プルトニウムは迷走 #原発はオワコン #核燃料サイクル #脱原発 #原発からの命の守り方 #再処理 #プルトニウム #MOX燃料 #日仏協力 #原発政策

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
💰 活動継続のため、カンパでお支えいただけたら嬉しいです
ゆうちょ 14490-22666151 モリタトシヤ
http://Paypal https://www.paypal.com/paypalme/toshikyoto/1000

6月10日(水)講演会「原発回帰で日本は大丈夫?そして世界の動きは?」―コリン・コバヤシ、守田敏也ジョイント講演会

守田です(20260604 01:00)

コリン・コバヤシさんとのジョイント企画、9日大阪に続いて10日京都でも行います。
18:00開城、18:30開始
龍谷大学深草キャンパス慧光館102教室

主催:原発を考える伏見フォーラム
協力:龍谷大学経営学部・細川孝研究室
連絡先:原発を考える伏見フォーラム事務局 TEL075‐604‐2133京都南法律事務所・溝江)

 

なお当日はzoom参加もできます。zoom参加の場合は以下からお申込みください。

forms.gle


● コリンさん講演「国際原子力ロビーの否定の戦略―エートス・プロジェクトを切り口として

コリンさんはフランス在住のジャーナリスト。ずっと国際原子力ロビーをおいかけてこられてきています。
国際原子力ロビーとは、1953年のアメリカ・アイゼンハワー大統領による「Atoms for Peace」以降、「原子力の平和利用」の名の下に作られてきた組織。
軸をなすのはUNSCER(国連科学委員会)1955、IAEA(国際原子力機関)1957、ICRP(国際放射線防護委員会)1928などです。年号は設立時のものです。

総じてこれらのロビーは、核の使用を推し進め、世界中に原発を広げるため、被曝被害をできるだけ小さく見せ、隠してしまうための活動を続けてきました。
そしてとても安全とは言えない被曝の限度値を打ち出し、世界中の人々に事実上の被曝の強制を行い続けています。

とくにチェルノブイリ原発事故以降、フランスの原子力ムラの要、原子力防護評価研究所CEPNのデイレクター、ジャック・ロシャールが中心となって企画した「エートス・プロジェクト」がベラルーシで始められました。
これは放射能汚染地帯で「被曝は思ったより危険ではなかった。放射能と共にある暮らしの可能性を探っていこう」というようなもので、そこにいる人々を騙して、被曝を強制する動きです。
このエートスがいま、日本にも入ってきて「フクシマエートス」となり、暗躍しています。

コリン・コバヤシさんはこうした「国際原子力マフィア」による人々への被曝の強制と立ち向かい続けてこられました。
今回の講演でも、そこで調べ上げてきたエッセンスを話してくださいます。
私たちが被曝から命を守り抜く上で、必須の知恵がつまっています。ぜひお聞きください。


● 守田講演「プルトニウムは迷走!原子力はオワコンー核政策のいきづまりをみる―」

私の講演は、今回は原子力政策の行き詰まりについてです。原子力政策はそれこそ「Atoms for Peace」から始まり、核燃料サイクルをその中心としてきました。
それはウランの核分裂の過程で新たに作られたプルトニウムに着目して作られたものでした。原子炉でウランを燃やし、その後に出てくる使用済み核燃料を再処理し、そこからプルトニウムを取り出す。
それをMOX燃料に加工し、高速増殖炉で燃やす。そうすると燃やした以上のプルトニウムができてくるので、その使用済みMOX燃料を再処理して取り出して燃やして、永遠にエネルギーが得られる・・・というものでした。

しかし実際に進めてみたらまったくうまくいかない。まず高速増殖炉が各国で失敗だらけで、核燃サイクルを諦める国が続出。そんな中、世界で最後まで残っていた「もんじゅ」も廃炉に、核燃サイクルの夢は崩れ出しました。
再処理も難問だらけ。日本では東海村で少しやったけれど、本格的に作った六ヶ所再処理工場はいま27回も運転開始延期中。稼働する前に老朽化してしまっています。
それで再処理をやれているのはフランスだけだったのだけれど、実は最近、そのフランスの再処理工場でもトラブル続き。

さらに再処理工場から出てきたプルトニウムからMOX燃料を作るフランスの工場でさらに深刻なトラブルが続いています。
ポイントは、ウランとプルトニウムが均一に混ざらず、「プルトニウムだまり」ができてしまっていること。そうなると危険で使えなくなるのです。
この結果、フランスの核燃料サイクルもかなりの行き詰まりの中にあるのですが、そうなると日本は相当に苦しくなる。再処理を委ねているし、もんじゅやふげんから出てきた使用済みMOX燃料の再処理も頼んでいるからです。

そんな中、イギリスがため込んだ約プルトニウム140トンを捨てると言い出しました。持っていても価値がない。捨てた方がいいと判断したのです。
なぜなのか。調べてみたら大きなことが見えてきました。もともと再処理はウランを燃やしてできてくるプルトニウムを取り出し、原爆を作るための技術でした。
それを「平和利用」しようとしたわけですが、軍事用と民事用に大きな技術的な差異があり、それが越えられないのです。このため実は使用済み核燃料にも、アクチノイドという扱いにくい物質ができてきていて、それでイギリスは断念したのです。

つまりそこにあるのは実は「Atoms for Peace」の破綻なのです!今回、この点をお話しします。

9日の大阪でのコリンさんと守田の講演も同じ内容になりますが、大阪ではコリンさんが持ってきて下さった映画「チェルノブイリその後の世界」の上映を行うので、大阪の企画案内はその解説を中心にしました。
その点で講演内容は9日大阪と10日京都はそれほど違いがありません。どちらか可能な方にお越しください。

被曝から命を守るため、そして核なき未来を手繰り寄せるため、ぜひご参加を。


#原発回帰で日本は大丈夫 #コリンコバヤシ #守田敏也 #国際原子力ロビー #エートスプロジェクト #核燃料サイクル #Atomsforpeace #AtomsforPeaceの破綻 #プルトニウム #モックス燃料

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
💰 活動継続のため、カンパでお支えいただけたら嬉しいです
ゆうちょ 14490-22666151 モリタトシヤ
http://Paypal https://www.paypal.com/paypalme/toshikyoto/1000

6月9日(火)映画「チェルノブイリその後の世界」上映とコリン・コバヤシ、守田敏也、池島芙紀子講演報告集会にご参加を

守田です(20260603 23:30)明日に向けて(2597)

フランス在住のコリン・コバヤシさんが関西を訪れます。9日に大阪にお招きし、ドキュメンタリー映画を上映と講演会を行います。守田も一緒に講演し、池島芙紀子さんの報告もあります。

2026年6月9日(火)大阪国労会館 3F大会議室(JR天満駅を環状線沿いに京橋駅方面に徒歩5分)
参加費:1200円(学生・障がい者・避難者600円) 時間区分は各自でご自由に、昼・夜通しでも可

主催:脱原子力政策実現全国ネットワーク関・福井ブロック
連絡先 TEL/FAX 072-843-1904  stopthemonju★nifty.com(★を@に)



● 解説「チェルノブイリ その後の世界」

「チェルノブイリ その後の世界」について、コリンさんからお送りいただいた解説文をそのまま掲載します。

〇被曝被害隠しと立ち向かう迫真のドキュメンタリー(タイトルは守田が付けました)

このドキュメンタリーは、2016年4月26日、チェルノブイリから30年経つ日に、仏独共同文化TVアルテが放映したドキュメンタリー『チェルノブイリー福島、Vivre avec‥』<(放射能と)と共に生きる>(オリヴィエ・ジュリアン監督)に対する応答として作られた映画です。『Vivre avec‥ (〜とともにある暮らし 守田注)は、IRSN(「放射線防護・原子力安全研究所」フランスの国家機関 守田注)から支援され、またジャック・ロシャールによってあらすじが作られたのではないかと思われるほど、国際原子力ロビーの意向に沿った映画だった。この映画をには、チェルノブイリ事故の後、残留放射能があっても、気をつけて暮らせば、汚染地帯でも楽しく暮らせる、チェルノブイリの森は生物多様性の宝庫になっている、といったプロパガンダまである。

フランスのNPO『チェルノブイリーベラルーシの子供たち』は、ミンスクの民間放射能研究所ベルラド研究所を支援するために、ミシェル・フェルネー医学博士とジャーナリスト、ウラディミール・チェルトコフによって作られた市民団体で、『Vivre avec‥』に反論するために、現会長イヴ・ルノワールがスタッフと共に現地に乗り込み、子供たちの医療に関与したベルラドで放射能測定をおこなった測定師や看護師などの証言を撮影し、全く対極にあるドキュメンタリーを制作した。

「その後の世界」での生活は、癒しから終末論的なものまで、限られた証言や矛盾する報告の対象となっている。人々の健康状態の変化は、根強い論争を煽り立てている。多くの研究では、疑いの余地のない健康状態の悪化について、放射線の要因を除外するほどである。高齢世代は、おおよそ、あの事故のページはめくられたと考えている。若い世代のほとんどは、20世紀の歴史の中でこのページを位置づけることができない。誤った情報がますます野放しになっている。こうして、立ち入り禁止区域が真の楽園であるという考えを植え付けた後、このデマの作者たちは、汚染地域に住むことは経験する価値のあることであると人々に信じ込ませるようになった。チェルノブイリでも福島でも、チャンスなのだ!

2016年5月初旬、NPO『チェルノブイリーベラルーシの子供たち』は、放射能環境が人々に及ぼすリスクや被害を最小限に抑えるために人生を捧げてきた数少ない人々の声を届けることで、その空白を埋めたいと考えた。被害者意識を克服し、運命論的な受動性を拒否し、彼らは終わりのない任務に身を投じる「最後の清掃作業員」として立ち上がる。それは、終わりのない任務に身を投じる姿であり、シジフォスの神話の生き写しである。この映画の主な目的は、彼らに正当な評価を与えることである。

この映画の後半断片的に、事故の10年後に行われたフランスの原子力ロビーによるエートス・プロジェクトの話が出てくる。このエートスをマネージメントしたジャック・ロシャール以下のエキスパートが福島においても、エートスのエッセンスを持ち込み、エートス手法を日本政府の内部で一般化しようとした。


制作者注

最近収集されたデータによると、チェルノブイリから475キロ離れたミンスク地方の子供たちの先天性心疾患は、通常の10倍から20倍の頻度で発生しており、 心臓病によって障害を負った子供の数は、2014年から2017年の間に2倍に増加した。

学校の子どもたちが運動場で突然死している。 これらの子どもたちはチェルノブイリの「相続人」である。

さらに、2008年1月~2月の国連ベラルーシ事務所の報告書には、事故の最終評価を提示した公式報告書にはまったく記載されていない情報が記載されている。2005年末に設立されたチェルノブイリ・フォーラム(国連の全機関およびベラルーシ、ウクライナ、ロシアの3か国政府が署名した文書)による最終評価の公式報告書にはまったく記載されていない情報である。特に、このニュースレターでは、以下のことが明らかになっている。

「ストリン中央病院の副院長ライサ・ミシュラ博士によると、出産適齢期(18~40歳)の女性の60%、そして妊娠中の女性の84%以上が何らかの疾患を抱えているとのことだ。これが、健康な子供が生まれることがまれである理由だ。新生児のほぼ90%が健康グループIIおよびIIIに分類される。[平均的な健康状態、健康状態が悪い、慢性疾患など。グループIVは障害者のグループで、糖尿病、脳性麻痺、ダウン症候群、重度の心臓疾患など。

「放射線生態学に関する知識の低さと実践能力の欠如は、本当に新たな取り組みを必要としています」とライサ・ミシュラ氏は強調する。

このように、チェルノブイリ事故による健康被害を否定する立場にある原子力ロビーの最も強力な支持者たちは、矛盾に巻き込まれている。事故による死者は50名しかおらず、将来がんになる可能性があるのは4,000名だけ、つまり旧ソ連における1日分の交通事故による死者数および負傷者数よりも少ないというチェルノブイリ・フォーラム報告書を否定するデータを、ベラルーシの国連事務所は発表している。

(国際がん研究機関(IARC)の推定は以下のとおり。チェルノブイリ原子力発電所から30km圏内に居住し事故後避難した避難民、および避難はしなかったが旧ソ連(ベラルーシ、ウクライナ、ロシア)の高度汚染地域に居住していた人の計約60万人を対象とすると、事故により増加するがん死亡は約4000人と推定され、旧ソ連の(高度汚染地域を除いた)汚染地域の居住者を含めて約740万人を対象とすると、合計で約9000人と推定された。さらに、最近の報告では、推定対象をヨーロッパ全体5.7億人に広げ、過剰死亡の数は約16000人と予測されている。しかし、この統計には、事故処理清掃人80万のことには、全く触れていない。彼らのうち、2000年初頭のウクライナ公式資料によると、うち10%以上が放射線に起因する癌で亡くなっている。)


● 上映は2回行います!

昼の部は14時40分から16時20分まで上映
夜の部は19時10分から20時40分まで
どちらも上映後に、コリン・コバヤシさんが10分弱、解説を行ってくださいます。

また当日、会場でDVDを手に入れられます。
ミンスクのベルラド研究所支援1口(1000円)以上m寄付してくださる方にDVDを1枚進呈してくださるそうです!


● 講演は昼の部と夜の部に分かれて行います。

昼の部 午後2時20分開場 その後映画上映 
16:30~17:30 
講演 守田敏也「沈みゆく仏・原子力政策」
報告 池島芙紀子「院内集会報告」

夜の部 午後5:40開場
18:00~19:00 
講演 コリン・コバヤシ「国際原子力ロビーの犯罪」
その後映画上映

ぜひご参加ください

#チェルノブイリその後の世界 #コリンコバヤシ #守田敏也 #原子力ロビー #被曝被害 #エートスプロジェクト #ベルラド研究所 #脱原子力 #チェルノブイリ #福島原発事故

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
💰 活動継続のため、カンパでお支えいただけたら嬉しいです
ゆうちょ 14490-22666151 モリタトシヤ

http://Paypal https://www.paypal.com/paypalme/toshikyoto/1000

6月7日、後藤政志さんと静岡で語ります――浜岡から原発の根本問題へ

守田です(20260601 19:00) 明日に向けて(2596)

● 「原発をなくそうトークショーin静岡」にご参加を

6月7日(日)、静岡市で開かれる**「原発なくそうトークショーin静岡」**に参加します。
元東芝の原発技術者・後藤政志さんと私・守田敏也のジョイント企画です。

まず後藤さんが、浜岡原発の基準地震動捏造問題を軸に1時間ほど講演されます。
その後、私とのトークショーと質疑応答を行います。

浜岡原発の問題はいま、静岡だけの問題ではありません。
原発の安全性とは何か。いまの原発行政と電力会社の姿勢は何を示しているのか。そして、そもそも原発はなぜ危険なのか。
そうした根本問題まで掘り下げる機会にしたいと思っています。

なお当日、守田のFacebookページからLive配信します。アーカイブも残します。webからもご視聴下さい。

日時: 2026年6月7日(日)13:30〜15:45
会場: 静岡労政会館 3階 ALWFロッキーセンター大会議室
    (静岡市葵区黒金町5-1 JR静岡駅北口より西へ徒歩7分)
連絡先: E-mail:hamannet199797@gmail.com Tel:054-292-4121
主催: 浜岡原発を考える静岡ネットワーク(浜ネット)・浜岡原発とめます本訴の会
後援: 静岡県労働組合共闘会議・安倍川製紙労働組合


● 後藤さんとの連携について

後藤さんとは、東電福島原発事故の直後からお付き合いがあります。

後藤さんは事故直後から原子力資料情報室のネット番組に登場し、原子炉内で起こっていることを次々と解き明かしながら、原発の構造的矛盾を語ってくださいました。その話には安全に対する技術上のあるべき考え方と、技術者としての深いモラルが込められており、私は強く心を動かされました。後藤さんの発言を次々と文字起こしし、ブログで紹介したのもそのためです。

やがて京都での学会でお会いして親しくなり、その後は何度もジョイント講演を行い、高浜原発への訪問など活動を重ねてきました。とくに昨年からの柏崎刈羽原発再稼働の動きに対しては、3回にわたる連続対談を行い、問題点を深く掘り下げてきました。以下にご紹介します。

 


www.youtube.com

 


www.youtube.com

 


www.youtube.com

 

● 柏崎刈羽で見えてきたこと――安全性は担保されていない

柏崎刈羽原発6号機は、営業運転に入る前から深刻なトラブルを繰り返しました。とくに問題なのは、原子炉の運転をつかさどる制御棒関連のトラブルの続発です。制御棒が途中で止まって引き抜けなくなったり、センサーが誤作動したり、作動しなかったりと、不具合のオンパレードでした。
私たちが東電の対応や所長の発言を詳しく分析して見えてきたのは、東電が一つ一つのトラブルの根本原因を理解できていないということです。場当たり的な対処が繰り返されており、根本原因にまでさかのぼれていない。

その背景にあるのは、設計思想の断絶です。この原子炉は設計から30年近くがたち、当時の技術者が持っていた設計思想がきちんと引き継がれていない。機器の劣化だけでなく、人の側でも重大な断絶が起きているのです。
しかも6号機は改良型沸騰水型原子炉で、制御棒駆動機構にモーターが新たに組み込まれるなど複雑化しており、なぜそれが組み込まれたのかの設計思想が把握されないまま、「不要」と安易に外してしまうような対応まで起きています。

さらに長期停止の影響もあります。長く動かしていないことで機器へのダメージが強まるだけでなく、運転技術そのものも低下します。
柏崎刈羽6号機は、まったく安全性が担保されていません。動かしてはならない原発です。

後藤政志さんと高浜原発を取材 2017年6月24日

● 今回は原発の根本問題に踏み込みます

実は後藤さんとは、この5月にも対談しました。いま編集中で、6月7日にリリースしたいと思っています。
今回は柏崎刈羽の個別問題を離れ、「原発はそもそもなぜダメなのか」 という根本問題を正面から論じました。

一つは、十万年以上にわたる放射能管理の問題です。原発でウラン燃料を核分裂させると放射能量は1000万倍になり、地中から掘り出したウランのレベルに戻るまでざっくり十万年以上かかります。
その管理を担うのは、このエネルギーの恩恵をまったく受けなかった未来世代です。これは未来世代への暴力でしかありません。原発の問題はエネルギー問題ではなく、倫理問題です。

出典『核燃料サイクル開発機構』

もう一つは、原発がそもそも技術として完成していないことです。原発の安全性の本質は「いざとなったら放射能を閉じ込められること」ですが、この技術は完成していません。
東電福島もスリーマイル島もチェルノブイリも、そのことを示しました。

後藤さんはこう語っています。原発メーカーも電力会社も規制委員会も裁判所も、「原発は安全だ」とは一言も言っていない。では事故が起きたら誰が責任を負うのか。「国民にも責任がある。確実に辛い責任を負わなければならなくなる。そうなってほしくない。だから原発が危険だと強調しているのだ」
まったくその通りだと思います。

そもそもいざとなったら放射能を閉じ込める装置=格納容器を守るためのベント=放射能排出装置がついていることがおかしい 後藤さんは繰り返しこうした矛盾点を指摘してきた

● ぜひ、会場でお会いしましょう

原発はエネルギー問題である前に、倫理問題です。国が滅びかねないという意味では、国防問題でもあります。
だからこそ、私たちには止める責任があります。

6月7日(日)、静岡で後藤政志さんとともにそのことをしっかり語ります。
「原発なくそうトークショーin静岡」にぜひご参加ください。
会場でお会いできるのを楽しみにしています。

#原発なくそう #静岡 #浜岡原発 #後藤政志 #守田敏也 #脱原発 #原発再稼働反対 #浜ネット #原発のない社会へ #原発は倫理問題

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
💰 活動継続のため、カンパでお支えいただけたら嬉しいです
ゆうちょ 14490-22666151 モリタトシヤ

http://Paypal https://www.paypal.com/paypalme/toshikyoto/1000

樋口英明さん講演―『原発を動かしてはいけない理由』―から学ぶ 5月16日京都にて

守田です(20260526 10:00)  明日に向けて(2595)

● 原発の本質はたった二つ!

5月16日(土)、京都「被爆二世・三世の会」の年次総会記念講演に元福井地方裁判所裁判長・樋口英明さんをお招きし、「原発を動かしてはいけない理由」をテーマに、講演して頂きました。
1時間半の講演と30分の質疑応答を収録した動画を公開します。ぜひご覧ください。

原発を動かしてはいけない理由 樋口英明 

youtu.be


樋口さんのお話はシンプルで明快!
まず樋口さんはこう指摘します。
「多くの人が原のことを難しいエネルギー問題と誤解している」と。

しかし実際は違うのです。原発の本質はたった二つに絞られるのです。

第一に、原発は「人が管理し続けないと暴走する」。
安全3原則――「止める」「冷やす」「閉じ込める」――が永遠に続かなければならないけどそれが難しい。
第二に、「暴走したときの被害は想像を絶するほど大きい」。
人が管理できなくなって暴走すると、国を滅ぼしてしまいかねない事態に至りかねない。それほどに被害が大きいのです。

樋口英明さん講演スライドより

東電福島原発事故の時、故吉田所長はとくに2号機をなんとか統御しようと必死になっていました。
しかしうまくいかず2号機は爆発寸前に至ってしまった。この時、吉田所長にはもう打つ手がなかった。
これが爆発すれば他の号機からも、福島第二原発からの撤退しなければならなくなる。しかし原発は「人が管理しないと暴走する」のです。
あわせて10基が暴走する。吉田所長はその時、起きることを「東日本壊滅」といいましたが、それでは収まらなかったかもしれない。
日本の国が無くなってしまう可能性だってあったのです。

この二つの本質を理解すれば、政府の政策や裁判所の判決が正しいかどうかが見えてくると樋口さんは強調します。
要するにこんなもの、動かしてはいけないのです。
「原発はエネルギー問題ではない。国防問題です」「しかも原発は自国に向けた核兵器です。日本はそれを50基以上も海岸線に並べてしまったので国防力を失っています」
だから原発をやめなくてはいけない。
「何も難しいことはない。当たり前のことです」と樋口さん。

講演会の様子 小林こうきさん撮影


● 樋口さんが原発を止めた理由(樋口理論)

これらを踏まえて樋口さんはこう述べられました。
①原発の過酷事故は極めて甚大な被害をもたらす。
②それ故に原発には高度の安全性(事故発生確率が低いこと)が求められる。
③地震大国日本において原発に高度の安全性が求められるということは原発に高度の耐震性が求められるということにほかならない。
④しかしわが国の原発の耐震性は極めて低い。
よって原発の運転は許されない!

樋口さんスライドより

 

具体的な数字が示されました。
地震はガルという尺度でその強さが表されています。ただし地震大国なのに地震の強さがリジットに測られ出したのは2000年以降。
それで最大の地震は2008年の岩手宮城内陸地震で4022ガルが計測されています。また1000ガルを超える地震も2000年以降、20回も起こっている。

このためハウスメーカーは三井ホームが5115ガル、住友林業が3406ガルまで耐えられる家を建てている。
これに対して原発はどうか。樋口さんが運転を差し止めた大飯3・4号機の基準地震動は判決時に700ガルでした。建設時はなんと405ガルで、311以降引き上げられました。
2026年3月時点では856ガル。老朽化するにつれて耐震性が「上がっていく」という、不思議で怪しげなことがなされていますが、それでもハウスメーカーが建てた家より一桁少ない。

そう。だからこそ運転は許されないのです。


● 原発容認派の弁解のまやかし

続いて樋口さんは「原発容認派の弁解」について説明されました。ウソによって作られた弁解ですが、わりと成功してしまっているものです。それは以下のように成り立っている。
①原発は岩盤の上に建っており、
②原発の耐震設計や岩盤を基準とするのに対し、
③地震計は地表の振れを基準としている
④地表の揺れは岩盤の揺れよりも遥かに大きい。したがって表1(2000年以降の主な地震の表 49分20秒から51分30秒まで表示)のように比較できない。

2000年以降の主な地震 樋口英明さん講演スライドより

実際はどうなのか。
①は誤り―岩盤の上に建っている原発は約半数
②③はー正しい
④は誤りー地表の振れと岩盤の揺れはほとんど変わらない。逆に岩盤の方が揺れが大きいこともある。

岩盤の揺れが地表の揺れよりも遥かに小さいという法則性はない。だから表1のように並べて比較できる。
ハウスメーカーが5115ガル、3406ガルに耐えられる家を建てているのに、大飯原発が856ガル(2026年3月)など、耐震性が低すぎる。

また樋口さんは原発容認派が次のように述べている点を批判されました。
「原発に替わるエネルギーの提案をしないままに脱原発を唱えるのは無責任だ」・・・。

樋口さんはこう言われました。
「この主張は、原発を単なるエネルギー問題と捉えている。我が国は福島原発事故によって国家存亡の危機に立たされた」。
このことをまったく見据えていないと。その通りです。


● 原発差し止め訴訟の問題点

続いて樋口さんは、原発差し止め訴訟の問題点を端的に指摘されました。
この訴訟で裁判所は何について判断しているのか

1、原発の耐震性が高いのか低いのかについて判断していない
2、電力会社・原子力規制委員会は「原発敷地ごとに将来到来する最高の地震が予知予測できる」としているが、このことが正しいかどうかも判断していない。
*原子力規制委員会の手続きに大きな間違いがないかどうかを判断している(例えば活断層の調査が十分だったかどうか等)

つまり裁判所は、原子力規制委員会の審査を合格しているので動かしても「大丈夫」としているのです。
しかし元規制委員会委員長だった田中氏はこう言いました。
「我々は原発が規制基準に当てはまるかどうかを判断しているだけであって、規制基準に当てはまるからといって安全だとは申し上げません」。
つまり規制基準に当てはまっていても安全性は確保されていないのです。にもかかわらず、この点に踏み込まない裁判のあり方は完全に間違っています・

樋口さんはこれを踏まえてこう述べられました。

「間違いなく国民の人権を最も深刻に、最も広範囲に侵害するのは原発なんですよ。だから原発は許さない。それを許さないとするところに法的正義があるのですよ。間違いなく私はそう思っています。
単にこちらが正しいのではないかと思っているだけではない。絶対に脱原発が正しいと思っているのですよ。だから私は動いているんです。自信がなかったらやらないですよ。
あの判決は間違いなく正しいですよ。後から出てくる判決を見てみたら、比較にならないぐらい私の判決は優れています。」

質疑応答ににこやかに答えられる樋口英明さん 守田撮影

● 樋口理論をわがものとしよう!

以上、樋口さんのお話をかいつまんで紹介しました。
この後に質疑応答があり、その中でもさらに深められていったので、ぜひ動画をご覧ください。

樋口さんのお話は明快です。これをわがものとしましょう。そしてこの明快な話を周りの人々に伝えていきましょう。
それが波紋のように広がる中で、やがて原発を止めることはできます。必ずできます。
ただ急ぐ必要がある。第二の過酷事故が起きる前に止めなくてはいけないからです。

そのためにこの動画を活用されて下さい。

#脱原発 #樋口英明 #司法 #原発裁判 #京都被爆二世三世の会 #耐震性 #原発の危険性 #福島原発事故 #国防問題 #原発再稼働反対

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
💰 活動継続のため、カンパでお支えいただけたら嬉しいです
ゆうちょ 14490-22666151 モリタトシヤ

http://Paypal https://www.paypal.com/paypalme/toshikyoto/1000

プルサーマルなど無理だった!――メロックス工場の品質問題と日本の混迷 後編

守田です(20260521 07:00)  明日に向けて(2594)

● 高速増殖炉の破綻をプルサーマルで代替することの無理

 

〇 そもそもプルサーマル用燃料の製造は構造的矛盾を宿命づけられていた

このように、メロックス工場は「扱いにくい乾式粉末」という課題に今なお苦しみ続けているわけですが、問題の深層をさらに掘り下げていくと、そもそも「プルサーマル」という政策自体が抱える構造的な矛盾が見えてきます。

本来、フランスをはじめとする核燃料サイクルの基本路線は、プルトニウムを効率よく増殖させて燃やす「高速増殖炉」が本命でした。しかし、高速炉の冷却材である「液体ナトリウム」の技術的ハードルは非常に高く、フランスのスーパーフェニックス(1985年稼働・1997年閉鎖)も、日本の「もんじゅ」(1995年ナトリウム漏洩火災事故・2010年炉内中継装置落下事故などを経て廃炉)も、技術的トラブルを連発して完全に行き詰まりました。

1995年に本格稼働を開始したメロックス工場は、このように「あふれるプルトニウムの行き場」を失っていく中で、本来はプルトニウムを燃やすようには設計されていない一般の軽水炉で強引に利用するためにスタートさせた便法、すなわち「プルサーマル計画」の量産拠点という役割を宿命づけられることになります。


〇 希釈の難しさが生む粉末工学上の難題

高速増殖炉用の燃料であれば、プルトニウムの濃度(富化度)は約15%〜30%という高濃度に設定されます。

これに対し、プルサーマル用のMOX燃料は、軽水炉で安全に燃やすためにプルトニウム濃度を約5%〜15%(平均5%〜8%前後)にまで薄めなければなりません。ここに、最初から粉末工学上の難題が生じていました。ウランの総量に対してプルトニウムの混入比率が下がるほど、巨大なウランの山の中に少量のプルトニウムを「ダマ(塊)を一切作らず、一様」に混ぜ合わせることは、技術的に困難になるからです。

メロックス工場では「MIMAS」と呼ばれる、最初にプルトニウム濃度の高いマスターバッチ(母合金)を作り、それをさらにウラン粉末で薄めるという複雑な二段階混合プロセスを採用してこの課題をクリアしようとしました。

稼働初期段階においてこの矛盾が顕在化しなかったのは、かつてフランスの原子力開発の現場で叩き上げられた、技術を持つ熟練工たちがまだ多くいたからに過ぎません。彼らが手作業の微調整や経験によって工学的な混ぜにくさをカバーし、量産を成立させていたのです。しかし、技術の継承は難しく、時間の経過とともに現場の技術力は形骸化していきました。そこへ先述の「ウラン粉末の特性変化(乾式への変更)」が直撃したため、蓄積していた構造的無理が一気に噴出したのです。


● プルトニウムは時間とともに変質する!それが全体の工程をより困難にしている

〇 プルトニウムの「時間経過による変質(劣化)」という絶対的ファクト

そして、メロックス工場の現場をさらに機能不全へと追い込み、日本の核燃料サイクルの息の根を止める最大の難関が、プルトニウムという物質が持つ「時間経過による自発的な変質(劣化)」です。これは核燃料工学における基礎的な物理ファクト(理論組成評価)であり、人間の都合で引き延ばすことのできない「物質の寿命」の証明です。

再処理工場で抽出されるプルトニウムの中には、核分裂の主役となるプルトニウム239だけでなく、プルトニウム241という同位体が多く含まれています。このプルトニウム241は、14.4年という短い半減期でベータ崩壊し、アメリシウム241へと変化(壊変)していきます。

このアメリシウム241こそが、サイクル全体を根底から揺るがす極めて厄介な物質です。アメリシウム241は、プルトニウム239の約56倍という猛烈な勢いでアルファ線を放出するだけでなく、透過力の強い強力なガンマ線も大量に放出します。

もともとプルトニウム粉末は物質の特性として非常にダマ(塊)を形成しやすい繊細な性質を持っていますが、抽出後に長く保管されたプルトニウムロットを使用しようとすると、このアメリシウムの蓄積にともなう発熱(崩壊熱)や放射線照射によって、粉末の化学的安定性や挙動が変化し、ただでさえ扱いにくい乾式ウラン粉末との均一な撹拌をいっそう困難にする致命的な足枷となります。さらに深刻なのは被ばくの問題です。強烈なガンマ線により、製造ラインの保守やトラブル対応にあたる現場作業員の被ばくリスクが許容値を超えて跳ね上がります。

メロックス工場の稼働初期にこの問題が目立たなかったのは、再処理されて間もない、アメリシウムの蓄積が極めて少ない「新鮮なプルトニウム」を優先的に使っていたからに過ぎません。しかし、長期保管されたプルトニウムを扱わざるを得なくなった現在、この「物質の自発的な劣化」と「現場の被ばく限界」という二重の壁が、製造ラインを決定的に機能不全へと追い込んでいるのです。


〇 プルトニウムは長く備蓄するとより使えなくなる

この点は極めて重要です。とりわけ、商業用原発で長期間にわたって燃やされた(燃焼度が高い)民生用の核燃料は、経済性と効率を追求した代償として、その内部にプルトニウム241を多く含んでいます。つまり民生用プルトニウムは、「効率を求めれば求めるほど、倉庫に置いているだけで自発的に劣化し、将来の燃料化を困難にする」という致命的な自己矛盾を最初から背負っているのです。

事実、イギリス政府および同国の原子力廃止措置機関(NDA)が、セラフィールドに保有する民生用プルトニウム約140トンの再利用(MOX化)を事実上断念し、地中への「廃棄(固定化処分)」へと舵を切らざるを得なくなっている最大の理由もここにあります。数十年にわたって保管されたプルトニウムはアメリシウムの蓄積が進んでおり、今さら莫大なコストをかけて再精製(アメリシウムの化学分離)をし、MOX燃料に加工することは技術的・経済的に極めて困難であると公式に結論づけられたのです。

そして、この冷厳な物理データは、日本が六ヶ所村の再処理工場プールなどに長期にわたって備蓄し続けている大量の使用済み核燃料にも、そっくりそのまま当てはまります。

日本原子力研究開発機構(JAEA)の公開データなどを見れば明らかな通り、軽水炉から取り出した使用済み燃料に含まれるアメリシウム241の量は、取り出し直後はわずかですが、燃料内のプルトニウム241が崩壊していくため、理論上10年後には約8倍、さらに数十年放置すれば十数倍へと一気に急増(蓄積)します。

完成延期を繰り返し、20〜30年もプールに放置され続けた燃料の内部では、まさにこのアメリシウムの蓄積が進行しています。つまり、日本が溜め込んってきた「備蓄」とは、長く置けば置くほど燃料加工を困難にする「劣化プルトニウムの山」に他なりません。いまさらこれを再処理してプルトニウムを取り出したところで、適切な品質のMOX燃料に加工することは極めて困難です。経費や作業員の被ばくリスクを考えれば、国策として進める意義は見出せません。

民生用の核技術を追い求めた結果、物質の寿命という自然界の法則によって自壊していく――これこそが"Atoms for peace"=「平和のための原子力」が突き当たった、理論的かつ物理的な末路なのです。


■ 結論

これら一連の事実に現れているのは、「高速増殖炉が破綻した時点で、核燃料サイクルというシステムは終わっていた」という科学的・歴史的事実です。プルサーマルという急ごしらえの代行策で、その破綻を繕うことなど最初から不可能だったのです。

プルトニウムを取り出しても、MOX燃料加工の側から見たら、それは品質的に劣化しきった「お荷物」でしかありません。いや、その劣化しきった粉末を加工できる生産の場(メロックス)さえも、物質のリアルな寿命とウラン粉末の供給問題によって稼働低下に追い込まれています。

かりに莫大な資金をさらに投入し、あらゆる無理を重ねてメロックスを延命させ、あるいは国内にJ-MOX工場を完成させたとしても、もう日本には、その肝心のMOX燃料を使うべき本来の高速増殖炉(もんじゅ)すら存在しないのです。経済の論理、環境の規制、そして何より自然界の物理法則そのものが、この政策の「完全な終わり」を告げています。


■ 主要参考資料・確認済み情報源

【プルトニウム241の物理的性質】
- Los Alamos National Laboratory "Plutonium Handbook"
- IAEA Nuclear Data Services

【イギリスの民生プルトニウム廃棄政策】
- UK Nuclear Decommissioning Authority Official Statement

【日本の使用済み燃料保管状況】
- JAEA (Japan Atomic Energy Agency) 公開データ
- 六ヶ所村再処理工場関連資料

#日仏核燃料サイクル協力 #プルサーマル #プルトニウム #アメリシウム241 #もんじゅ #廃炉 #六ヶ所村再処理工場 #使用済み核燃料 #物質の寿命 #エネルギー政策

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
💰 活動継続のため、カンパでお支えいただけたら嬉しいです
ゆうちょ 14490-22666151 モリタトシヤ

http://Paypal https://www.paypal.com/paypalme/toshikyoto/1000

プルサーマルなど無理だった!――メロックス工場の品質問題と日本の混迷 前編

守田です(20260520 21:00)  明日に向けて(2593)

日本の原子力政策の柱である「核燃料サイクル」が、かつてない危機に瀕しています。その象徴的事例が、フランスのメロックス(Melox)工場におけるプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料の製造不備と、それに伴う関西電力高浜原発4号機での装荷見送りです。日本はいま、使用済み燃料を再処理して再び燃料として利用する「プルサーマル計画」を核エネルギー政策の軸として掲げています。そして、日本の原発で使われるMOX燃料の主要な供給拠点となっているのが、フランスのオラノ(Orano)社(旧アレバ)が運営するメロックス工場です。
ところが2013年頃から、同工場の製造工程ではトラブルが続発して生産力が大幅に低下しています。それだけでなく、製品である燃料の品質そのものが劣化し、国内外からの信頼性も大きく揺らいでいます。関西電力が、高浜4号機へのフランス製MOX燃料の装荷を一部見送るという異例の決断を下した事実は、フランスの製造現場がすでに限界を迎えていることを日本の電力会社自身が認めざるを得なくなった決定的な証拠です。核燃料サイクル政策の根幹は、今や完全に崩壊しつつあります。


● メロックス工場の行き詰まりにより「リサイクル」の根幹が揺らいでいる

〇 二酸化ウラン粉末の供給元変更による品質低下


メロックス工場での品質悪化の主たる原因は、原料供給元の変更にあります。フランス原子力安全局(ASN)の公式報告書などでも明らかな通り、従来、フランスのMOX燃料製造には、国内のピエールラットにあるTU2という工場で「湿式プロセス」によって製造された、細かく均一な二酸化ウラン(UO2)粉末が用いられていました。

しかし2011年頃に同工場での生産が終了し、ドイツのリンゲンにある工場で「乾式プロセス」によって製造された二酸化ウラン粉末へと切り替えられたのでした。ちなみにリンゲン工場は、もともとドイツの核政策の軸にあったシーメンス傘下の会社でしたが、ドイツの脱原発政策を受けてアレバ(現オラノ)が買収した経緯があります。

ところが、この乾式プロセスで製造された酸化ウラン粉末は、従来の湿式粉末に比べて粒子が粗く、異なる流動性や物理的特性を持っていました。そのため、ウランとプルトニウムを混合する際に、両者が均一に分散しなくなるという技術的なミスマッチを引き起こしたのです。

ASNの公式報告によれば、この粉末特性の変化にともない、製造されたMOX燃料ペレットに「ひび割れ」や「欠け」といった物理的不良が急増しました。この影響で、2016年から2021年の間にメロックス工場の年間MOX燃料生産量は124トンから51トンへと激減(58%の低下)。一方で、製品にならない年間不良スクラップは従来の5〜10トンから15〜20トンへと倍増するという事態に陥りました。


〇 「プルトニウム・スポット」と品質・安全文化の課題

物理的な破損以上に深刻なのは、化学的な不均一性、すなわち「プルトニウム・スポット(富化度局所異常)」の発生懸念です。

粒子の粗い乾式ウラン粉末と、物質として特有の強い凝集性(ダマになりやすい性質)を持つプルトニウム粉末は適切に混ざり合いません。これにより、MOX燃料ペレットの内部に、局所的にプルトニウム濃度が高い「スポット」が生成されてしまうリスクが高まります。軽水炉の環境下において、プルトニウムはウランに比べて核分裂を起こしやすいため、このスポットが存在すると、原子炉内でそこだけがピンポイントで異常発熱を起こします。これは燃料を包む被覆管(ジルコニウム合金)を内側から破損・溶融させ、冷却水へ放射性物質を漏洩させるリスクを孕んでいます。

このため、ASNは2016年の公聴会において、オラノ社の組織体制に対し「生産量を優先するあまり、品質管理や安全文化を軽視している」と公式に警告(Avis)を発しました。フランス監査院(Cour des Comptes)の累次の報告書でも、経済的・技術的な合理性の喪失が厳しく指弾されています。


しかし、これらの警告後もメロックス工場では不良品が続出しました。現場では、不合格になったペレットを再び粉砕して原料ラインに再投入する「スクラップ循環」の頻度が増加し、これがむしろ成分の不均一性をさらに助長するという、技術的な悪循環に陥っています。この結果、日本の電力会社もフランスの品質劣化に対して強い警戒を抱かざるを得なくなり、前述の高浜原発での装荷見送りへと繋がったのです。


● なぜ製法を変えたのか――湿式プロセスの「制度的行き詰まり」と乾式の罠

ここで一つの疑問が生じます。なぜ、これほど深刻な不適合を起こすとわかっていながら、オラノ社はウラン粉末の製法を「湿式」から「乾式」へと変えてしまったのでしょうか。それは単に技術的に作れなくなったからではなく、「現代の環境基準と経済合理性の枠内では、もはや湿式を維持することが不可能になったから」という、原子力産業そのものの制度的な行き詰まりが原因でした。

〇 湿式プロセス(ADU法)が直面していた3つの限界

ピエールラット(TU2工場)などで長年採用されていた湿式法は、ウランを硝酸に溶かし、アンモニアを加えて沈殿させる方法ですが、以下の3つの限界によって完全に退路を断たれていました。

1, 廃液処理のコスト上昇
湿式法は大量の液体を使うため、窒素化合物を含む大量の放射性廃液が出ます。フランス国内で環境規制(特に水質保護)が厳格化する中で、この莫大な廃液を無害化・固化する処理コストが跳ね上がり、経済的にサイクルを維持不能なレベルに達していました。
2, 工場の老朽化と被ばく管理「液体」を扱う湿式は、配管の腐食や放射性物質の漏洩リスクが常に付きまといます。TU2工場は1970年代から稼働しており老朽化が深刻でした。湿式特有の汚染リスクを抱えながら大規模な改修を行うには、もはや採算が合わなかったのです。
3, プルトニウムとの相性の過信と部門間の断絶
かつて、この「しっとりとして流動性の良い湿式ウラン粉末」は、プルトニウムと混ぜるには最適でした。しかし、原子力産業の上流(ウラン精製部門)は、下流(MOX燃料加工部門)の現場がどれほど繊細な粉末特性を要求しているかよりも、自部門の「廃棄物削減・コスト効率化」を優先してしまったのです。


〇 経済合理性がもたらした不適合

通常の原発で使うウラン燃料(LEU)の製造においては、この乾式粉末はすでに主流となっており、大きなトラブルもありませんでした。

しかし、ウラン単体の場合とは異なり、ウランとプルトニウムを均一に混ぜ合わせなければならないMOX燃料の製造において、この乾式粉末への切り替えは粉末工学的に致命的なミスマッチを引き起こすことになります。

フランス原子力産業の再編(コジェマからアレバ、そして現在のオラノへ)の過程で、組織が進めたのは「工場の集約化とプロセスの標準化」でした。コストのかかる湿式プロセスを廃止し、効率的な乾式へと一元化するという経営側の経済合理性が、メロックスというプルトニウムを扱う現場の技術的制約を置き去りにしたまま強行されたのです。

この「技術的な適合性よりも組織の合理化を優先した姿勢」こそが、後にフランス原子力安全局(ASN)から、オラノ社は生産量やコスト削減を優先し、技術的な品質管理や安全文化を軽視している、と厳しく指弾されることになった構造的要因です。

これは「もう一度、昔の湿式に戻せば解決する」という単純な話ではありません。湿式を維持する経済的・環境的な基盤はすでに失われており、かといって乾式ではまともなMOX燃料が作れない。つまり、核燃料サイクルという巨大システムそのものが、進むことも退くこともできない技術的・制度的な絶対の壁に激突しているのが真相なのです。

 

後編に続く 次回はそもそもプルサーマルそのものが無理だったことを突き出します!


■ 主要参考資料・確認済み情報源

【メロックス工場の生産データ】
- WISE-Uranium "Operating Nuclear Fuel Plants - France"
- Orano Annual Activity Report 2024

【フランス原子力安全局(ASN)の警告】
- ASN 公式報告書(2016年公聴会)

注記

本記事における因果関係の分析(「湿式から乾式への転換が制度的行き詰まりから必然的に生じた」など)は、上記の客観的事実と公開政策文書に基づきながらも、著者による統合的解釈を含んでいます。

#日仏核燃料サイクル協力 #プルサーマル #メロックス工場 #高浜原発 #関西電力 #MOX燃料 #原子力政策 #調査報道 #フランス原子力安全局 #脱原発

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
💰 活動継続のため、カンパでお支えいただけたら嬉しいです
ゆうちょ 14490-22666151 モリタトシヤ

http://Paypal https://www.paypal.com/paypalme/toshikyoto/1000

樋口英明さんが説く「原発を動かしてはいけない理由」 5月16日(土)

守田です(20260512 13:00)  明日に向けて(2592)

5月16日(土)午後2時半から、京都「被爆二世・三世の会」の年次総会記念講演として、元福井地方裁判所裁判長・樋口英明さんをお招きします。
講演タイトルは「原発を動かしてはいけない理由」。多くの皆さんのご参加をお待ちしています。

 

守田講演スライドより

ラボール京都とZoomの併設です。アーカイブ視聴も可能です。
お申し込みはこちらから:

forms.gle


● 樋口英明さんについて

樋口さんは2014年5月、福井地方裁判所の裁判長として、関西電力大飯原発3号機・4号機の運転差し止めを命じました。
この判決は「原発の危険性は明らかであり、国民の生命・身体の安全を脅かすことは許されない」という明確なメッセージを発しました。当時、多くの市民がこの判決に希望を感じました。

しかし、その後の司法の流れは異なりました。最高裁は2022年6月、福島原発事故をめぐる国の賠償責任を否定する判決を出しました。
以来、原発容認の判決が相次ぎ、岸田政権下では原発の再稼働と新増設が次々と進められています。

樋口さんは判定を下した後も、著作や講演を通じて問い続けてきました。
その集大成ともいえるのが、2023年3月に出版された『増補改訂 私が原発を止めた理由』(旬報社)です。

● 「原発を動かしてはいけない理由」とは何か

樋口さんが説く原発の問題は、実はシンプルです。

第1 原発事故のもたらす被害は極めて甚大。
第2 それゆえに原発には高度の安全性がある。
第3 地震大国日本のおいて原発に高度の安全性が求められるということは、原発に高度の耐震性が求められるということに他らない。
第4 しかし、我が国の原発の耐震性は極めて低い。
第5 よって、原発の運転は許されない。

このシンプルな論理が、なぜ社会で共有されていないのか。なぜ司法も、それを認めようとしないのか。樋口さんはこの間、その謎にも向き合ってきました。

講演する樋口さん ノーモアヒバクシャ枚方の集いにて 20240720 守田撮影

● 司法が問われている

最近の樋口さんの著作では、裁判官自身の姿勢が問われています。
多くの人は、裁判官が原発容認判決を出すのは、人事や給与で不遇を被る恐れがあるからだと思っています。しかし樋口さんは違うと言います。裁判所はそこまで圧力に弱い組織ではない。
むしろ問題は「裁判官は選挙で選ばれていないのだから謙虚でなければならない」という教育にあるのだと。その「謙虚さという呪縛」が、裁判官の判断を歪めているのです。

しかし樋口さんは、同時にこうも言います。
「住民側が論理と証拠を尽くし、なおかつ国民・市民の多くが脱原発に確信を持つようになれば、最高裁でさえそれに反する結論は出せない」と。
つまり、「謙虚さの呪縛」の問題を説きつつも、私たちが裁判を諦めず、原発の危険性に対する社会の確信を広げることの重要性を樋口さんは説かれ続けています。その先に真っ当な判決がかちとられる可能性があるからです。

● 5月16日、樋口さんの話を聞く意味

福島事故から15年。原発問題をめぐる社会的な関心は、一見すると低下しているように見えます。
しかし、被曝地の人々の苦しみは続いており、放射能汚染の問題も解決していません。
私たち京都「被爆二世・三世の会」も、健康調査などを通じて、その現実に向き合い続けています。

同時に、ウクライナ戦争やアメリカ・イスラエルのイラン攻撃の中で、原発の問題は新たな局面を迎えてもいます。
こうした時代だからこそ、樋口さんが説く「原発を動かしてはいけない理由」を、改めて、みんなで聞く意味があります。
この講演でなされるのは、単なる情報提供ではありません。私たちが社会を変える力を持っていることを改めて認識する機会になるはずです。
ご参加ください

日時:5月16日(土)午後2時半~
場所:ラボール京都第12会議室(会場参加)またはZoom(オンライン参加)
参加費:500円(資料代)

年次総会は午後1時半から開催します。総会だけのご参加も、講演だけのご参加も、どちらでも構いません。
お申し込みはこちらから:

京都「被爆二世・三世の会」2025年度年次総会・記念講演参加及び録画視聴申込フォーム

Facebookイベントページはこちらをご覧ください:

https://fb.me/e/5NxoMWUIw

みなさんのご参加を、心からお待ちしています。

#原発 #脱原発 #樋口英明 #司法 #原発裁判 #京都被爆二世三世の会 #大飯原発 #耐震性 #原発の危険性

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
💰 活動継続のため、カンパでお支えいただけたら嬉しいです
ゆうちょ 14490-22666151 モリタトシヤ

http://Paypal https://www.paypal.com/paypalme/toshikyoto/1000

Atoms for peaceの破綻としてのラ・アーグの行き詰まり

前回の記事で、ラ・アーグ再処理工場が「蒸発缶」の摩耗によって物理的にも経済的にも行き詰っていることを明らかにしました。
今回、押さえていきたいのは、このことがもともと兵器級プルトニウム=核兵器製造技術であったものを、民需=発電に転換しようとしたことに伴う必然的な限界であるということです。
要するにいま直面しているのは”Atoms for peace”の破綻なのです。


守田です(20260502 20:00)  明日に向けて(2591)

● 軍事目的と民間利用の違いは燃焼度にある

核再処理技術は、その出発点において軍事目的と民間利用では根本的に異なる要件を持

蒸発缶は、もともと軍事用の低燃焼度燃料を想定して設計された。その後、ラ・アーグでは軽水炉燃料の再処理に対応するため民間用ユニットが追加され、処理対象の化学組成はより複雑になった。高燃焼度燃料では蒸発濃縮工程で予期しない難溶性物質が析出し、蒸発缶内に不均質なデポジット層を形成する。これが局部腐食を加速させ、ASN検査では2012~2015年に腐食速度が設計値の3~5倍に達していることが確認された。軍事用設計を民間用へ転用したことの矛盾が、ここで一気に表面化したのである。


っています。
軍事用途の再処理では、プルトニウム生産が唯一の目的です。その場合、低燃焼度の使用済み燃料を迅速に処理し、純度の高い兵器級プルトニウム(Pu-239濃度>93%)を効率的に抽出することが求められます。
低燃焼度とは燃焼期間が短いことを指しますが、その場合、処理対象が限定的で化学組成も比較的単純なままなので、蒸発濃縮から析出・固化までの各プロセスが予測可能な範囲内で設計できたのでした。

これに対し、民間用途の再処理は全く異なります。軽水炉(LWR)の発電炉では、経済効率を追求のため、できるだけ長く核燃料を燃焼させます。その結果、高燃焼度の使用済み燃料が生成されます。
この使用済み燃料には、低燃焼度では生じなかったアメリシウム、キュリウム、ネプツニウムなどの長寿命アクチノイドが大量に含まれ、さらに多種多様な核分裂生成物が蓄積されます。その結果、複雑な化学環境に直面するのです。

高レベル廃液の蒸発濃縮段階では、単純な硝酸塩沈殿では収まらない、多くの難溶性物質が析出し、予測不可能な沈殿層(デポジット)を形成します。それが蒸発缶を激しく摩滅させていく。
ラ・アーグの蒸発缶腐食問題は、実はこのように軍需設計の民需への無理な適用の結果、生じているのです。この構造的矛盾が、以降の歴史的・技術的展開を説明する鍵となります。


● マルクール複合施設の軍事起源とラアーグにおける民間転換

フランスの再処理事業は、核兵器開発プログラムの一部として1958年に始まりました。マルクールにある複合施設のUP1(Usine de Plutonium 1)で、軍事用プルトニウム生産炉の燃料処理が開始されたのです。
この時期の再処理技術は軍事目的に最適化されていました。低燃焼度の燃料から純度の高い兵器級プルトニウムを抽出することが目的だったため、化学プロセスは比較的単純で予測可能でした。蒸発缶の設計も、単純な硝酸塩沈殿を想定してなされました。


これに対しラ・アーグでは1966年にU2プラントが建設されました。当初、このプラントも軍事用プルトニウム生産炉(ガス冷却炉GCR)の燃料処理に充てられていました。
しかし1970年、フランスのエネルギー政策が軽水炉(LWR)による発電へシフトしました。フランス版のAtoms for peaceでした。これに伴ってUP2にLWRの使用済み燃料に対応する新たなユニットが作られ、そのための改造が必要となりました。

1972年~1976年の改造では、「高活性酸化物(HAO)前処理施設」が追加されました。これは、酸化ウランからなるLWR燃料を機械的に粗割り(shearing)し、その後化学処理可能な形に変換する施設です。
それまでのガス冷却炉GCRは金属燃料を使っており、比較的容易に硝酸で溶かすことができましたが、これとは構造の違う軽水炉(LWR)の使用済み燃料に対しては、このような機械的前処理が不可欠だったのです。

つまり1976年、UP2はガス冷却炉の使用済み燃料からプルトニウムを取り出す軍需施設と、軽水炉に対応する新たなユニット=民需施設とを並行して動かすハイブリッドな施設に変わりました。
この際、軽水炉に対応して400トンの処理を行うとの意味で、このユニットはUP2-400と名付けられました。

1980年代後半から1990年代初頭、フランスの原子力計画はさらに急速に拡大していきました。フランスも高速増殖炉(Superphénix)を開発し、商業化せんとしており、これもふまえた再処理能力の大幅な拡張が計画されました。
かくして1994年8月、UP2-400が改造をほどこされて容量が400トン/年から800トン/年へと倍増。UP2-800として操業を開始しました。

しかし、この拡張は致命的な誤算に基づいていました。先にも述べたごとく民間発電炉で生成される高燃焼度の使用済み燃料には、アクチノイドなど、やっかいな物質が含まれていたからでした。そしてそれが蒸発缶内の化学環境を複雑にしてしまいました。
このため予測不可能な沈殿層(デポジット)が形成され、1980年代の設計に基づく蒸発缶では対応できなくなっていったのです。


● 外国との契約を促進したものの契約破棄が続き採算性が破綻

1989年、COGEMA(後のAreva)はUP3をラ・アーグに建設しました。この施設は、1977-1978年に7ヶ国(ドイツ、ベルギー、日本、オランダ、スイス、イタリア、スペイン )の30の外国顧客による事前資金調達によって支えられました。
[出典:IEER "The International Civilian Reprocessing Business"]
つまりUP3は、フランスが他国の使用済み燃料の再処理をひきうけることで、国際的な再処理市場を支配し、膨大な利益を生み出そうとする商業的野心に満ちた計画だったのです。

しかしこの戦略は急速に崩壊していきました。ドイツは自国におけるWackersdorf再処理プロジェクトを中止したのち、フランス契約に切り替え、大手の顧客でしたが、その後、再処理からの撤退を選択。ベルギー、スイス、スペインも同様に撤退しました。
イタリアも1986年のChernobyl事故後、1987年の国民投票を経て原発廃止政策に転換し1990年代半ばに再処理を終了しました。その後、イタリアの原子力廃止企業Soginとフランスの間で2006年に残存燃料235トンの再処理契約が結びましたが、既存の貯蔵燃料の処理に過ぎません。
一方、オランダは現在もUP3と契約している少数国の一つですが保有原炉は1基のみ、しかも小型炉です。

こうして外国顧客が相次いで撤退したため、UP3の稼働率は設計能力の10-30%に低下してしまいました。顧客はどんどんいなくなり、いまや日本のみが残されている状態です。
結局、フランスは、もはや展望のない国際契約に基づいて建設した巨大施設を抱え込むことになってしました。商売としてもまったくうまくいかなかったのです。


● 蒸発缶問題の再検証:軍需設計の限界

さてここで蒸発缶腐食問題を再度、捉え返しておきたいと思います。これは軍民転換の根本的矛盾が物理的に顕在化した象徴です。
前号の記事で確認したように、2012年から2015年にかけてのASN検査で、蒸発缶の腐食速度が設計予測の3~5倍に達していることが明らかになりました。デポジット層の形成が局部腐食を加速させていました。
その詳細なメカニズムは明らかにされていませんが、いずれにせよ1980年代の軍事指向の蒸発缶の設計基準では、想定されていなかった腐食がおきてしまったのです。その蒸発缶の交換には3.5億ユーロ以上(2015年見積もり)が必要とされています。

これは単なる技術的問題ではなく、軍需で成功した技術を民需に無理やり適用した結果の経済的破綻を示しているのです。
つまりラ・アーグは軍需の民需への転換で技術的に難題を抱えてしまいました。さらにはその民需の商業契約でも、相次ぐ撤退によって展望を失ってしまっているのです。

まさにフランス版Atoms for peaceは破綻してしまいました。その象徴としてラ・アーグの行き詰まりがあります。


● 軍需技術の民需への転換の失敗は六ヶ所再処理工場の行き詰まりにもつながっているのでは

ここで重大な点が浮上してきます。ラ・アーグの蒸発缶問題にあらわれた高燃焼度使用済燃料の再処理の技術的困難性が、六ヶ所再処理工場でも顕在化しているのではないか?という点です。

蒸発缶問題では、高燃焼度化に伴うアクチノイド(Am, Cm)の大幅増加が、腐食加速につながっていました。
一方で六ヶ所再処理工場は、ガラス固化がうまくいかずに行き詰っています。その根拠としてあげられているのが白金族元素(Ru, Rh, Pd)が発生し、ガラス固化溶融炉底部での白金族堆積が繰り返し発生することです。

つまり白金族への対処にてこずり続けているのですが、この白金族は高燃焼度化に伴って炉内に発生するプルトニウム239が核分裂しその核分裂生成物としてできてくるのです。まさに高燃焼度の産物なのです。論拠を示しておきます。
「プルトニウム239の核分裂によるルテニウム、ロジウム、パラジウムの生成は、ウランの核分裂の場合の約2倍である。」原子力環境整備促進・資金管理センター「高レベル放射性廃液の処分」Topics No.116(2015年12月)

https://www.rwmc.or.jp/library/file/topicsNo.116.pdf

これまで繰り返し押さえてきたように、軍事用プルトニウム生産は低燃焼度・短期照射を前提とした技術体系です。そこでも高レベル廃棄物のガラス固化は行われていますが、六ヶ所のような目詰まりは報告されていません。
ところがこの事象はラ・アーグでも起きており、六ヶ所では工場が動かない致命的要因と化しています。これも高燃焼度特有の課題を想定していなかったが故の行き詰まりなのではないでしょうか。

軍民転換という理想は、核燃料サイクル全体の物理的・経済的現実の前に破綻しているのです。
つまり六ヶ所もまた軍需技術の民生技術への転換の失敗=Atoms for peaceの破綻を示しています。


● プルトニウム在庫と政治的継続⇒失敗しているのに止められない!

フランスは現在、民間用だけで96.3トンの分離プルトニウムを保有しています。同国内にある未照射の分離民生用プルトニウム総量は113.7トン。ここには外国顧客の預かり分14.45トンなどが含まれますが、そのほとんどが日本のものです。これらのプルトニウムの大部分はラ・アーグに保管されています。なお、これ以外に軍需用のプルトニウムもありますが、少なくともIAEAの民生用年次申告には含まれていません。


IAEA査察下で、この膨大なプルトニウム在庫を国際的に正当化する唯一の手段は、MOX燃料製造を通じた「削減」です。しかし、Melox工場の生産能力は限定的で、2016年の124トンから2021年には51トンまで低下しています。
つまり、プルトニウム削減速度は遅く、在庫は増え続けているのです。

そんな中で再処理を中止すれば、プルトニウム在庫の正当性が失われ、資産であるプルトニウムがただのゴミになり、大破綻に直面します。一方、採算性のない再処理を続けていても確実に経営破綻が進み、しかも膨れ上がるだけです。
フランスはこの矛盾に直面しながらも、国防上の理由(核抑止力の維持)と国際的なコミットメント(プルトニウム管理)を理由に、強引に再処理を継続せざるを得ない状況にあります。
これと同じように日本もまたもはや将来的展望はまったくないのに、核燃料サイクルから撤退できずにいます。失敗しているのに止められないのです。

どうしたらよいのでしょうか。何より大事なのはこの破綻の現実を広く世に知らしめることです。国内だけでなく世界にもです。
そして私たち市民が「無駄で愚かで危険で意味のない核燃サイクルをやめよ。撤退せよ」との声を高くして、日仏政府に迫っていくことだ大事です。その中で政策転換させるしか道はありません。
しかしその道しかないことは、両国の官僚たちも、技術者たちも知っていること。
実は彼ら自身が最もよく知っているのです。事実それでイギリスは100トンものプルトニウムを廃棄する決断をくだしました。日仏もできないことはありません。私たちの手で核燃サイクルを終わらせましょう。

#日仏核燃料サイクル協力 #ラ・アーグ #再処理工場 #核燃料サイクル #プルトニウム

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
💰 活動継続のため、カンパでお支えいただけたら嬉しいです
ゆうちょ 14490-22666151 モリタトシヤ
http://Paypal https://www.paypal.com/paypalme/toshikyoto/1000

樋口英明さん講演「原発を動かしてはいけない理由」にご参加を!(5月16日(土)午後2時半から

守田です(20260501 22:00)  明日に向けて(2590)

● 京都「被爆二世・三世の会」2026年度年次総会と記念講演を行います

5月16日に京都「被爆二世・三世の会」2026年度年次総会を行います。
午後1時半から2時半まで。京都市西院のラボール京都第12会議室とzoomの併設です。

午後2時半からは記念講演(オープン企画)を行い、元福井地裁裁判長の樋口英明さんにお話しいただきます。
タイトルは「原発を動かしてはいけない理由」です。
参加費(資料代)500円です。

お申し込みは以下からお願いします!(会場参加、zoom参加ともにお申込みください)

forms.gle

zoom参加の方は以下に参加費をお振込みください。
ゆうちょ銀行 記号14440 番号35292631 タイラ ノブユキ
他の金融機関からの場合 店名四四八 店番448 普通 口座№3529263

なお1時半からの年次総会に会員外の方もオブザーバー参加できます。

 

● 『増補改訂 私が原発を止めた理由』を3月に出版

2014年5月、福井地方裁判所の樋口英明裁判長が大飯原発3・4号機の運転差し止め命令を出したとき、その判決文は原発の危険性と人間の尊厳について深く洞察した内容として今も語り継がれています。
その樋口さんは退官後も各地で講演活動を続け、原発の危険性を伝え続けてこられました。

しかし岸田政権以降、政府は原発推進へと大きく転換してしまいました。そして2022年の最高裁判決では「国は賠償責任を負わない」と判示され、その後の裁判でも原発運転を認める判決が相次いでいます。
こうした流れの中で、樋口さんは今年3月、『増補改訂 私が原発を止めた理由』(旬報社)を出版されました。前著(2021年出版)に、最近の原発回帰の動きと、それを認めている裁判官たちの姿勢についての鋭い言及を加えたものです。


● 原発は「シンプルに危ない」

樋口さんの議論の特徴は、何よりもそのシンプルさです。
原発の最大の問題は、耐震性が致命的に低いこと。地震国・日本で、そんなものを動かしてはいけない。それは難しい議論ではなく、子どもにも分かる話です。なのに、かつて最高裁で原発の裁判は「専門技術訴訟だ」と言われ、それ以降、「難しい技術論争」に仕立てられてしまってきました。しかしそうではない。原発はシンプルに危ないのです。
樋口さんは繰り返し、この誰にも分る危険性を押し出すことの重要性を指摘されてきました。反対に原発批判が技術論などを重ねて難しくなっていくほど、裁判官がそれを理解できず、結局は主流派の「安全論」に寄ってしまうこともあったからです。

樋口さんは同書の6ページでこう述べられています。
第1 原発事故のもたらす被害は極めて甚大。
第2 それゆえに原発には高度の安全性がある。
第3 地震大国日本のおいて原発に高度の安全性が求められるということは、原発に高度の耐震性が求められるということに他らない。
第4 しかし、我が国の原発の耐震性は極めて低い。
第5 よって、原発の運転は許されない。

その通りです!

ノーモアヒバクシャ枚方の集いで発言される樋口さん 20240720 守田撮影


● 司法を縛るもの――「謙虚さ」という呪縛

ただし、樋口さんはこの間の裁判経験を通じて、問題はそれだけではないことにも着目されてきました。たとえ法理的には住民側が正しくても、最高裁の判断に下級審が追従してしまえば、住民側は敗れる。
実際そうしたことが繰り返されてもきたのです。

樋口さんは今回の増補改訂版で、その点と真正面から向き合い、「謙虚さという呪縛」という、裁判官の姿勢の根底にある問題を掘り下げられました。
多くの人は、裁判官が原発容認判決を出すのは、人事や給与で不遇を被る恐れがあるからだと思っています。しかし樋口さんは違うと言います。裁判所はそこまで圧力に弱い組織ではない。
むしろ問題は「裁判官は選挙で選ばれていないのだから謙虚でなければならない」という教育にあるのだと。

この「謙虚さ」という教えのもとに、裁判官たちは自分たちの判断を、専門家や行政の決定に預けてしまいやすくなっているというのです。その結果、最高裁が出した判決に下級審も従い、原発容認の流れが加速してしまっている。
けれども樋口さんはこの状態に絶望していません。むしろ逆に「選挙で選ばれていないからこそ、時流に流されず、法と論理によってのみ判断できる存在、それが裁判官の固有の価値なのだ」とまっすぐに説かれています。
裁判官たちがそこに気づき、その役割を取り戻せば、司法はまた真っ当な判断ができるようになる。樋口さんはそう主張されています。

2019年に大津市で講演される樋口さん 守田撮影

● 社会の確信が広がれば、司法も動く

さらに大事なのはこの点です。樋口さんはこう説かれています。「住民側が論理と証拠を尽くし、なおかつ国民・市民の多くが脱原発に確信を持つようになれば、最高裁でさえそれに反する結論は出せない」と。
つまり、裁判を諦めてはいけない。同時に、社会の確信を広げることの方がいっそう大切だ。この両者を同時に進めることが必要なのです。

京都「被爆二世・三世の会」では、今年も被爆二世・三世の健康調査を続けています。私たちがつかんできたのは放射線被曝の現実です。東電福島原発事故の被曝と被爆二世・三世に重なるものがあるのです。
こうした現実を積み重ねる中で、「原発は本当に危ない」という確信を私たちももっと広げていきたいと思います。

そのために5月16日、樋口さんをお招きして、原発をめぐる「司法と責任」について共に考えたいと思います。ぜひご参加ください。


#原発 #樋口英明 #脱原発 #司法 #原発裁判 #京都被爆二世三世の会 #原発の危険性 #5月16日講演 #放射能 #原子力災害

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
💰 活動継続のため、カンパでお支えいただけたら嬉しいです
ゆうちょ 14490-22666151 モリタトシヤ
http://Paypal https://www.paypal.com/paypalme/toshikyoto/1000

 

ラ・アーグ再処理工場「蒸発缶問題」と核燃料サイクルの構造的危機

ラ・アーグの再処理施設は、世界で最も実績のある再処理施設として、日本を含む多くの国から使用済核燃料を受け入れてきました。しかし近年、「高レベル放射性廃液蒸発缶」の予想外の腐食問題が露呈し、同工場の構造的危機を象徴する事態となっています。この問題は単なる技術的な老朽化ではなく、核燃料サイクル全体の経済的・物理的な行き詰まりを示唆しています。

【本記事について】
なお本稿は前号『日仏核燃料サイクル協力(1965~2026)のたそがれ―原子力政策にはもはやまったく展望がない』の続編です。

moritasccrc.hatenablog.com

前号では日本とフランスの核燃料サイクル協力の歴史的破綻を分析しました。本号ではその破綻の直接的な原因となった、ラ・アーグ再処理工場の技術的・経営的危機を詳細に検証します。

 

守田です(20260429 12:00) 明日に向けて(2589) 

● ラ・アーグ再処理工場の成立背景と転換

ラ・アーグの再処理施設は、1960年代から段階的に建設されてきました。再処理施設はUPと呼ばれています。公式には "Usine de Production"(生産工場) の略ですが、その実態はまさに「プルトニウム工場(Usine de Plutonium)」そのものです。 
最初に建てられたのは「UP2-400」でした。1966年に軍事用プルトニウム生産を目的として稼働を開始し、1976年に軽水炉燃料処理へ転換されました。スタートが核兵器製造装置であったことは重要です。

UP2-400はさらに1994年にUP2-800へと改編され、名目容量が400トンから800トンへ倍増されました。国内需要の伸びへの対応でした。 
さらに1977年から1978年にかけて、フランスはドイツ、ベルギー、オランダ、スイス、日本など7ヵ国、30の顧客と国際的な商業契約を結びました。それぞれの国で発生した使用済み核燃料の再処理を引き受けたのです。 
こうして作られたのがUP3工場でした。7か国の30の顧客が建設資金を事前に払い込み、その見返りとして、1990年から2000年頃までの10年間、UP3の再処理容量(年間800トン)に対する契約上の権利を獲得したのでした。

フランス再処理施設の発展と転換

ラ・アーグとマルクールは、しばしば同じ「フランス核燃料サイクル」の内部で語られるが、地理的にはフランス北西端と南東部に大きく隔たっている。ラ・アーグは使用済み燃料の貯蔵・再処理拠点、マルクールのMeloxはMOX燃料製造拠点であり、この長い距離をまたいで再処理・プルトニウム利用政策が支えられている。ラ・アーグの使用済み燃料プール公称容量は17,600トンである。守田作成



● 蒸発缶とは何か なぜ高レベル廃液を濃縮する必要があるのか

こうしてラ・アーグでUP3工場が1989年に、UP2-800工場が1994年に操業を開始しました。これらの工場には「高レベル廃液蒸発缶」という装置が組み込まれています。 
再処理には初めに強酸性の硝酸溶液で使用済み核燃料を溶かすことから始まるのですが、こうして生じた「高レベル廃液」を約145℃、10気圧の高圧・高温条件下で濃縮するのがこの装置です。ステンレス鋼製の本体に加熱用パイプを備えています。

蒸発缶で廃液を濃縮することは、再処理工程における不可避な段階です。その理由は三つあります。第一に、保管・輸送コストの削減です。軽水炉燃料1トンの再処理から発生する高レベル廃液は、約3~5立方メートル(3000~5000リットル)に達します。 
この液体を水のまま保管すれば、膨大なタンク容量が必要になります。蒸発によって水分を90%以上取り除くことで、廃液の体積を1/10以下に縮小できるのです。 

第二に、最終処理(ガラス固化)への準備です。高レベル廃液は最終的には「ガラス固化体」に変換されます。水分が多すぎると、ガラス融解炉での加熱効率が悪くなり、水蒸気が大量に発生して処理設備への負荷が増加します。 
さらに、最終的なガラス固化体の品質が低下する可能性があります。濃縮によって水分を減らすことが、効率的で高品質なガラス化を実現するのです。 

第三に、放射線の遮蔽効率です。高レベル廃液は猛烈な放射線を放出しています。同じ放射能量を小さな体積に集約することで、遮蔽壁(鉛やコンクリート)の厚さを減らせ、労働者への被ばく線量を低減できます。
つまり、濃縮プロセスは、廃液管理の経済性、最終処分の効率性、労働安全性のすべてを同時に満たすために不可欠なのです。しかし、この「必要な濃縮」が、同時に予期せぬ腐食を引き起こす複雑なメカニズムを生み出してしまいました。

ラ・アーグ再処理工場の蒸発缶の構造 ASNの資料をもとに守田が作成


● 難溶性塩(デポジット)形成と局部腐食

蒸発缶内では、高レベル廃液中の化学成分が、145℃、10気圧の高温・濃縮条件下で複雑な化学反応を起こします。
高レベル廃液中のストロンチウムやバリウムなどの核分裂生成物が、蒸発缶内で濃縮される中で、硫酸塩(硫酸バリウムなど)といった難溶性塩として固体化します。これらの沈殖物は蒸発缶の底部に厚く堆積し、「デポジット」を形成します。 
2012~2015年の測定により、このデポジットが形成されている領域で、予想を大幅に超える速度の腐食が進行していることが判明しました。デポジット直下のステンレス鋼の肉厚が、設計予測よりはるかに速く減少していたのです。

具体的な腐食メカニズムについては、公開されている技術文書では詳述されていません。ただし、デポジット層が化学環境を変化させ、局部腐食を加速させたことは測定結果から明らかです。その詳細なプロセスについては、さらなる技術分析が必要です。
それでも設計時には想定されなかったデポジット直下での局部腐食が、設計予測を遥かに超える速度で進行してしまったのは明らかです。1980年代の設計段階では、この種の腐食現象は制御不可能だったということです。

 

● 蒸発缶腐食問題の発生と経営危機

ラ・アーグのUP3とUP2-800に設置された高レベル廃液蒸発缶は、設計寿命30年で作られました。ところが2012~2015年に実施された定期安全審査でフランス原子力安全規制庁(ASN)の指示により肉厚測定したところ、予想より著しく速い腐食速度が判明しました。このペースが継続すれば、最も腐食が進んだユニットは2018年にも耐久性が危機的水準に達する可能性が指摘されました。

2016年2月、ASNはアレバ(現オラノ)経営陣に対し異例の公聴会を開催し、強い懸念を表明しました。その後、法的監視体制を敷き、腐食進展防止措置の実施(温度・圧力制限、頻繁な検査、デポジット除去)を義

務付けました。
このためオラノは旧蒸発缶の全面交換計画を策定し、UP3工場の蒸発缶は2023年中盤に新設備が接続され、UP2-800工場も2024年に交換が進められました。

しかし、経営面での困難は深刻です。オラノの2025年上半期報告書によれば、ラ・アーグの「バックエンド売上はプラス19.1%増加」と記載されています。 
しかし同時に「バックエンド営業利益はマイナス9400万ユーロ」と記され、蒸発缶交換を含む老朽施設の対応費用が事業採算を大きく圧迫していることが分かります。売上増加という表面的な好転の陰で、実質的な経営利益は悪化し、破綻しているのです。

ラ・アーグ再処理工場の6基の蒸発缶では、2012年、および2014~2015年の測定で、腐食速度が設計想定を大きく上回ることが明らかになった。ASNは2016年、最も劣化した蒸発缶では2018年にも安全上の問題が具体化しうると警告している。本図は、公開資料で確認できる「全6基で設計値超過」「多くが概ね3~5倍水準」という情報をもとに、その異常性を模式的に示したものである。守田作成

● プール飽和危機と対抗措置の矛盾

蒸発缶腐食に伴う処理能力の低下は、直接的に使用済み核燃料プールの飽和問題へ波及しました。フランス全土の原発から毎年1,100~1,200トンの使用済燃料が発生していますが、蒸発缶交換のための停止期間の間にプールに使用済み燃料が貯まっていきました。 さらにメロックスMOX工場で不具合が発生し、生産が正常時の3分の1に低下してしまいました。そのため再処理しても次の工程に進められず、再処理のペースが落ちています。 
その結果、プールから取り出される使用済燃料の量が減少する一方で、原発から新たに排出される使用済燃料は相変わらずプールに滞留し続けています。

ASNはこのため一時期、2027~2035年のプール飽和を警告していました。プール容量が満杯になれば、全ての原発が停止する可能性があるという深刻な状況でした。
しかし2024年4月、ASNはこれを見直し、Oranoが提示した複数の対抗措置が連携すれば、飽和時期が後延ばしされる可能性があるとしました。

対抗措置とは、プール密度化(リラッキング)による容量+30%、Melox工場の生産改善、そしてMOX燃料の利用継続です。しかし、ここには根本的な矛盾があります。 
ASN・Oranoの論理を言い換えれば、こうなります。「プール飽和を避けるために、MOX製造と利用を続けなければならない。しかし、MOX製造と利用を続けることで、使用済みMOX燃料という、より体積の大きい燃料をプールに返し続けることになる。」

つまり、この対抗措置は、問題そのものを永遠に繰り返す構造であって、根本的な解決ではなく、延命に過ぎません。
加えて以下の複数の条件が全て満たされる必要があります。Melox工場の継続的な生産安定化(現在も生産不良が散発的に発生)、プール密度化による容量増加が予定通り2025年に実装、そしてEDF中央統合貯蔵プール(2034年予定)の確実な完成と稼働です。 
これらの条件が一つでも欠ければ、プール飽和リスクは再び顕在化する可能性があります。

ラ・アーグ再処理工場の航空写真 赤枠はEDF計画の中央集約貯蔵プール予定地 出典:actu.fr「Nucléaire : le projet de piscine d'EDF sur le site d'Orano la Hague fait des remous」©EDF /actu.fr

ラ・アーグの使用済み燃料プールは、2015年末の時点で実効容量12,352トンに対し9,935トンがすでに貯蔵されており、Fissile Materials Instituteは2016年、現行の燃料管理が続けば2025年までに追加容量が必要になると警告していた。その後、ASNは2024年に「2040年までに満杯」との危険評価を見直したが、逼迫懸念そのものが消えたわけではない。本図は、2016年時点の危機認識と2024年時点の見直し後の評価の差を、公開情報に基づいて模式化したものである 守田作成


● 核燃料サイクルの構造的行き詰まり

ラ・アーグの蒸発缶問題の本質は、核燃料サイクルそのものの経済的・物理的な限界を示唆しています。

第一に、経済的限界があります。1980年代の設計に基づく施設が40年以上稼働しましたが、老朽化対応に巨額の投資が必要となっています。
新しい蒸発缶の交換だけで3.5億ユーロ以上(2015年見積もり)の投資が必要とされ、さらに老朽化対応にともなう廃止措置関連費用の増加が予想される中で、再処理事業の採算性が根本的に問われています。

第二に、物理的限界があります。蒸発缶の腐食メカニズムが従来の予測を超える複雑性を持つことが判明しました。
デポジット形成と局部腐食は、設計段階では制御不可能な現象です。材料改善や操作条件の調整は一時的な対症療法に過ぎません。つまり「問題を解決した」のではなく、「一時的に先延ばしにした」に過ぎないのです。

第三に、システム的限界があります。再処理工場、MOX工場、原発、貯蔵プール―これらが緊密に連結されたシステムの中で、一つの設備の故障が全体に波及してしまいます。
蒸発缶交換で一部改善しても、他の施設の老朽化が全体の制約となり、トラブルが繰り返される中で、生産性向上は限定的でしかなく、むしろどこでまた工程がストップしてしまうかも分からない状態にあります。

核燃料サイクルは構造的に行き詰っている―ラ・アーグの現状はこのことを突き出しています。
そして実はこの構造的限界は、核兵器製造施設を発電施設に転換しようとしたことによってもたらされています。次回、その点を論じます。

フランスの再処理事業を担うOranoのBack End部門の営業利益は、2019年以降、赤字と黒字を大きく行き来しており、事業基盤の不安定さが際立っている。2024年は6.16億ユーロの黒字となったが、これはOrano自身が説明するように、日本の電力会社との契約による一時的寄与に大きく支えられたものだった。その一方で、長期契約の採算見直しや end-of-lifecycle(廃止措置等)関連の追加引当が利益を圧迫しており、再処理事業の構造的脆弱性が解消したとは言いがたい。守田作成

なお記事の作成と図表生成にAI(Genspark)を活用しました。

#日仏核燃料サイクル協力 #ラアーグ再処理工場 #蒸発缶問題 #核燃料サイクル #原子力危機 #脱原発 #プルトニウム政策 #フランス原発 #AtomsForPeace #核のゴミ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
💰 活動継続のため、カンパでお支えいただけたら嬉しいです
ゆうちょ 14490-22666151 モリタトシヤ
http://Paypal https://www.paypal.com/paypalme/toshikyoto/1000

日仏核燃料サイクル協力(1965~2026)のたそがれ―原子力政策にはもはやまったく展望がない

守田です(20260425 12:00) 明日に向けて(2588)  (20260430 12:00) 修正

日本は核燃料サイクル政策においてフランスとの太い絆を形成し、使用済み核燃料の再処理の多くもフランスに託してきました。しかしいま、そのフランスの核燃サイクル政策が大きな行き詰まりをみせ、日本にも深刻な影響を与えつつあります。
いまこの事態と向き合うことが大事なのは、日仏の核燃サイクル政策のつながりの深化が、1973年の第四次中東戦争に伴う石油禁輸措置や、オイルショックによる石油価格の高騰を背景に進んできたこと、そして今日、再び石油危機が発生しているからです。
私たちが見ておくべきなのは、石油の代替として原子力を選んではならないし、選べもしないということです。なぜなら原子力にはまったく展望がないからです。日仏核燃料サイクル協力の行き詰まりによく表れています。この点を深堀します。


● なぜフランスとの提携がめざされたのか

日本は1956年に原子力委員会を設置し、「平和利用」を掲げた原子力開発を始めましたが、大きく米国技術に依存していました。ウラン濃縮・軽水炉設計ともに米国の寡占下にあったためです。1972年2月に日仏原子力協力協定を結んだのは、米国に代わる技術供給元を確保する戦略的選択でした。1973年のオイルショックにより、この協力は一層深まることになります。
1965年7月、日本は仏原子力庁(CEA)と政府間協力を模索する手紙交換を開始、当時、米国が濃縮ウランの供給を厳格に統制していたのに対し、フランスは独立した核戦力保有を掲げ、ウラン採掘から再処理までの「完全な核燃料サイクル」を構築していました。

1972年2月26日、日仏原子力協力協定が東京で調印され、日仏技術者グループが「ウラン濃縮に関する共同調査」に着手。日本独自の濃縮ウラン製造技術を確保の道が開かれました。この核のエネルギー自立戦略は翌1973年のオイルショックでを一層加速。
1978年、日本原燃などの事業者がフランスのコジェマ(COGEMA、後のオラノ)と、使用済燃料の再処理委託契約を締結。日本は年間数百トンの使用済燃料をフランスのラ・アーグ再処理工場へ送り、回収プルトニウムをフランスで一時保管することになりました。
1987年、さらに本質的な技術移転契約が締結されました。フランスの再処理技術を導入し、ラ・アーグと同じ設計構造を持つ六ヶ所再処理工場を国内建設することが決定されたのです。イギリスからも技術導入し、日本独自の工夫も加えられました。

 


● 高速増殖炉—プルトニウムの夢に突き進んだものの

これに続き開発が目指されたのが高速増殖炉でした。通常の軽水炉がウラン235(天然ウランの0.6%)を燃焼させることに対し、高速増殖炉(fast breeder reactor)はウラン238をプルトニウム239に「転換」し、それを燃料として「増殖」せんとするものでした。
消費した以上のプルトニウムを生み出すという原理で、1960年代から1980年代、核科学者たちはこれを「プルトニウム経済」と呼びました。天然ウランの0.6%しかない核分裂性のウラン資源を無限に利用できる未来を夢見たのでした。
フランスはこの思想に最も深く傾倒していました。フェニックス(1973年)とスーパーフェニックス(1985年)という2つの高速増殖炉を建設し、プルトニウムの夢を追いかけていたのです。日本も同じ信念の下で、もんじゅの建設に踏み切りました。

1994年4月、日本の「もんじゅ」が初臨界を達成。日仏で楽観的な未来像が強まりましたが、しかし現実は異なりました。
まずフランスで1973年に臨界し良好な運転を保ってきたフェニックスが、1989年以降、相次いでトラブルを起こし、一時停止。その後もトラブルが続いて2009年に廃炉となりました。35年間の運転で目標の半分以下の稼働率しか示せませんでした。
スーパーフェニックスはより酷く、1985年の稼働以来、ナトリウム漏洩、燃料移送タンク設計欠陥で停止、タービンホール屋根の崩落、制御不能な炉心反応事象など重大事故を続け、11年間の稼働率は7%以下、1998年に仏政府が経済的失敗のため廃止しました。

もんじゅも同様でした。稼働後1995年12月に深刻なナトリウム漏洩事故を起こしました。しかも当初、事故の隠蔽を測り、社会的信用も大きく損なってしまいました。
もんじゅは結局、この事態から立ち直れず、その後もトラブルが相次いで発生し、結局、2016年に廃止が決定されました。20年以上の稼働期間中、実発電日数はわずか250日しかありませんでした。

 


● 高速炉への転換—ASTRID計画を立ち上げたものの

高速増殖炉が失敗に終わったとき、日仏ともに深刻な選択肢の前に立ちました。プルトニウム政策を放棄するか、それとも別の形で継続するかでした。
両国が選んだのは、後者でした。それでまずはプルトニウムを「増殖」させるのではなく、単に「消費」する高速炉(fast reactor)への転換が図ることが目指されました。
2010年代、フランスはASTRID(Advanced Sodium Technological Reactor for Industrial Demonstration)という新型高速炉計画を発表。もはや増殖はあきらめ、蓄積したプルトニウムの処理を目指しました。高速増殖炉失敗の後始末でした。

2014年、日本とフランスはASTRID計画への協力に合意。日本は約200億円の資金投入を行い、ASTRID炉の設計・開発に携わることになりました。しかし2018年6月、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)はASTRID計画の凍結を公式に発表しました。
建設費が€6billion(≒770億円)に高騰し、技術的不確実性が継続し、経済合理性が喪失したためです。日本が投じた約200億円は事実上失われました。
しかし日仏は高速炉開発そのものから撤退することはしないしできませんでした。なぜなら高速炉の失敗を認めることは、核燃料サイクル政策全体の破綻を意味し、日本47トン、フランス65トンのプルトニウム保有の「正当化根拠」を失うことになるからです。

そのため、2024年、日本は「新しい実施取り決め」という名目で、フランスから知見を「活用」するという形で、高速炉開発を継続することにしました。2026年2月の第7次エネルギー基本計画でも「高速炉実証炉開発」が掲げられています。
しかしこれは技術的な見通しや経済性の根拠があるのではなく、プルトニウム政策を継続するために、死んだプロジェクトに延命処置を続けさせているのに等しい。ゾンビのように命はないけれども、「動いている」ように見せ続けるしかなくなっているのです。

 


● 協力の行き詰まり(2024~2026年)

この状態に追い打ちをかけているのが、フランスで進めてきた再処理工程の行き詰まりです。というのはラ・アーグの高レベル廃液を濃縮するための「蒸発缶」という装置が、設計当初の予測よりも3~5倍も速く腐食していしまい、運転が困難になったのでした。
これが発覚したのは2014年、操業開始から25年のことでしたが、結局、新品に交換せざるを得ず、2024年、オラノ社はラ・アーグ再処理工場の蒸発缶交換をようやく完了しましたが、高額な出費を迫られると共に、いまも以前の生産力を回復できていません。
1970年代の設計時点で予見不可能だった老朽化リスクが顕在化したのです。さらに再処理工程の先にあるMOX燃料製造工程でも不具合が発生。世界で唯一のメロックスMOX工場が品質問題により生産能力が1/3に低下し、新規発注が事実上停止してしまっています。

そしてこれらのことが次々と使用済み核燃料が持ち込まれるラ・アーグのプールの空き容量を狭めており、フランス政府が一時期、2030年代にフランス全土の原発が動けなくなると宣言、いまも40年代に動けなくなるとの予測が出され続けています。
2026年4月現在、日仏核燃料サイクル協力は形式的には継続していますが、六ヶ所再処理工場を完成できない日本は、ラ・アーグに再処理を委ねるばかり。しかしそのラ・アーグは行き詰まり、プルサーマルのためのメロックスMOX燃料工場も不具合続き。
さらにそんなフランスに、日本は新型転換炉ふげんで発生した使用済み核燃料731体(うちMOX燃料554体)ともんじゅで発生した使用済みMOX燃料体465体の再処理を委ねています。MOX燃料だけで合計1000体を超えわけですが、しかしフランスでもMOX燃料再処理は進まず、そのための特殊燃料処理施設(TCP)建設が白紙撤回されてしまいました。もはや完全にどん詰まりなのです。

なおこれらについては以下で詳述しています

moritasccrc.hatenablog.com

moritasccrc.hatenablog.com

 


● 核燃料サイクルから撤退し安全管理へ

日仏核燃料サイクル協力は、1965年の手紙交換から出発しました。そこでは「エネルギー自立と核主権の追求」が目指されました。中核にあったのは、プルトニウムを「増殖」し「消費」するという夢でした。
しかし高速増殖炉は失敗、高速炉計画も破綻、ラ・アーグ再処理工場とメロックスMOX燃料工場の行き詰まり、夢が砂上の楼閣であることはもはやはっきりとしています。核燃サイクルはたそがれを迎えている。原子力はオワコンなのです。

2026年現在、日本とフランスが維持しているのは、過去の間違った選択の「後始末」です。日本44.5トン、フランス96.3トン超の民間用のプルトニウムと、フランスだけでも毎年1,100トン以上発生する使用済燃料—これらの処理出口を見いだすことで躍起となっています。
しかしそれならもはや核燃サイクルからの撤退、プルトニウムの夢の放棄を公言すべきです。さらには燃料プールが満杯に近づき、それ自身が危険になっていることも踏まえて、原発の運転を停止し、これ以上、使用済み燃料を増やさないようにすべきです。

その上で少しでも安全性を担保し、未来世代への悪影響を低減する道を探るしか私たちがとるべき道はありません。
ただしそれはすべて原発の運転を完全に停止し、核燃料サイクルからの明確な撤退を宣言した後での話です。運転を続けたまま「乾式貯蔵施設」や「最終処分地」などの選択肢を提示しても、原発延命の手段にされかねないからです。
日仏核燃サイクルのたそがれは、私たちにそのことを問うています。


なお記事の作成と図表生成にAI(Genspark)を活用しました。

#日仏核燃料サイクル #原子力政策 #プルトニウム #高速増殖炉 #ASTRID計画 #ラアーグ #もんじゅ #核のゴミ #原発延命 #脱原発

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
💰 活動継続のため、カンパでお支えいただけたら嬉しいです
ゆうちょ 14490-22666151 モリタトシヤ

http://Paypal https://www.paypal.com/paypalme/toshikyoto/1000

三陸沖地震は警告!後発巨大地震リスクと六ヶ所を含む複合危機

守田です(20260421 11:00)明日に向けて(2587)

● 原発・核燃サイクルの中止を求める院内集会に参加します!

本日午後、参議院会館講堂で院内集会が行われます。
私も規制庁への質問を行います。ご注目を

● またも三陸沖で地震発生

2026年4月20日16時52分頃、三陸沖を震源とするM7.5(速報値、Mw7.4)の地震が発生しました。
青森県階上町で震度5強、六ヶ所村で震度4を観測し、気象庁は同日19時30分、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表しました。
これは単なる一回の強い地震として済ませてよい出来事ではありません。
日本海溝・千島海溝沿いで想定される巨大地震との関係で、平常時より高まったリスクとして受け止める必要があります。

令和8年4月20日16時53分頃の三陸沖の地震について | 気象庁

北海道・三陸沖後発地震注意情報について | 気象庁


● 北海道・三陸沖後発地震注意情報発令

今回の地震について、気象庁と内閣府は、震源位置や規模を精査しました。
その結果、日本海溝・千島海溝沿い巨大地震の想定震源域に影響を与える場所で起きた地震であり、後発地震への注意を促す基準を満たしたと説明しています。
今回の地震を将来の巨大地震と無関係な局地的現象として片づけることはできなのです。

北海道・三陸沖後発地震注意情報について 気象庁地震火山部

https://www.jma.go.jp/jma/press/2604/20b/nceq01.pdf

もっとも、これは地震予知ではありません。
公式資料が示しているのは、Mw7.0以上の地震の後、7日以内にMw8クラス以上の地震が起きる頻度が約1%、平常時の十倍程度になるという統計評価です。
必ず起きるわけではありませんが、最初の2~3日は、「より強い揺れをもたらす地震」にも注意が必要とされています。 

内閣府の最大想定では、日本海溝沿いの巨大地震はM9.1規模に達しうるとされています。その場合、青森県六ケ所村では震度6強、八戸市では最大27m級の津波が想定されています。
今回の地震がそこまでの災害をもたらしたわけではありませんが、最大想定が現実の政策課題であることを改めて突きつけたと言うべきです。

日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の解説ページ : 防災情報のページ - 内閣府


● 青森に核施設が林立している!危険!

とりわけ重大なのは、六ヶ所村周辺に再処理工場、ウラン濃縮工場、東通原発など、この地域に危険度の高い施設が集中していることです。
現時点では、六ヶ所村の核燃料サイクル施設や東通原発、女川原発に大きな異常は確認されていないと報じられています。
しかしそれは「今回は深刻な事態に至らなかった」というだけのこと。日本海溝型地震では六ヶ所村は震度6強の地震に襲われると予測されています。

ここの安全性を高めなければ。そのためには危険で無謀で展望のない原発と核燃サイクルを一刻も早く中止し、もっぱら安全性を高めるだけの処置を進めることが必要です。
そうでないと、万が一の時にとんでもないことになってしまう。その可能性を少しでも減らすことこそが求められているのです。

 

● 当面問われること

同時に、少なくとも今後1週間、特に最初の2~3日は、大きな地震が発生しうると考えて対処を重ねておく必要があります。
避難経路の確認、家族との連絡方法、非常持ち出し品、備蓄、家具固定――こうした準備を、いま一度具体的に点検する必要があります。
社会経済活動を継続しながらも、「すぐに逃げられる態勢」を維持しておきましょう。

北海道・三陸沖後発地震注意情報 札幌管区気象台

https://www.data.jma.go.jp/sapporo/jishin/kouhatsu.html

今回の三陸沖地震は、被害が比較的限定的だったからこそ、警告として受け止めるべきです。
巨大地震は、しばしば「何もなかった次の日」の顔をして近づいてきます。
六ヶ所をはじめとする核施設の安全確保を最優先に据え、後発巨大地震への備えを一段引き上げるべき時です。 
同時にいまこそ原発・核燃サイクルの中止を決断すべきです。この声を高めましょう!

#原発核燃サイクルの中止を #三陸沖地震 #北海道三陸沖後発地震情報 #六ヶ所再処理工場 #原発と地震 #原発はオワコン

「放射能からの身の守り方」についてお話しします!4月20日(月)神奈川県大和市午後2時より

守田です(20260419 21:30) 明日に向けて(2586)

● 核を取り巻く問題を基礎的な事から分かりやすく話します!

表題のタイトルでお話しします。明日20日(月)午後2時から4時半です。
大和市中央林間市民交流拠点ポラリスにて
主催は「放射能問題を考える会大和」

チラシをご紹介します。


この中にこのような文言があります。
「放射能の問題について詳しく、全国でも数々の講演会を行われている守田敏也さんをお呼びして、核を取り巻く問題を基礎的な事から分かりやすく講義していただきます」

それで「核を取り巻く問題を基礎的な事から分かりやすく」とは何か。今一度、考え直してみました。
結論として思うのは、核の出発点から話すこと。始まりから話すことです。その問題がどのように始まったのかを説くと、それがどのようなものなのか、見えてきやすいからです。
つまりそのものが何なのかは、そのものがどう生まれてきたのかを見ると良く見えてくるのです。

核の問題ではそれは、つまるところ核兵器製造に行きつきます。
ウランが核分裂することが発見されるとともに、それで爆弾を作ったらすごいことになる!という閃きがうまれ、やがて原爆が製造され、使われ、大殺戮が行われたのでした。
ここから見ていくと、核とは何なのか。放射能とは何なのか。身を守るために必要なことは何かが見えてきます。
そしてそれこそが「放射能からの身の守り方」の大事な要素をなしていきます。


● エネルギーとは何か。原子力とは何かから入ります!

さて今回はもう少し歴史をさかのぼってお話しします。そもそもエネルギーとは何かです。
これは原子力もエネルギーの一つともいえるため、しばしば原発問題を「エネルギー問題」として語る方がおられるからです。

そしてそこからの議論は「エネルギーが足りなくなったら困るから原発を動かそう」という話につながっていきやすい。
あるいは「省エネを進めて原発を無くそう」と本来は違う話を一つに括りつけてしまう方もおられます。

そうではない。核はエネルギーといっても安定的に取り出せるものではなく、膨大な危険性を伴うし、その上、無害化するまでに絶望的と言える時間を要する廃棄物を出してしまう。
だからたとえエネルギーが足りなかろうと使ってはならないものなのです。

いやそもそも他のエネルギーについても常に正の面と負の面がつきまとっています。そもそもエネルギーがこれほど開発されなければ戦争のこれほどの肥大化もなかった。
その点でそもそもエネルギーとは何か。その功罪とは何かをしっかり見据えるところから、「核」が生まれてくる背景を抑えることが「核」への理解を深めてくれます。

守田講演スライドより


● 原発の今、被曝の今、そして脱原発の可能性についてお話しします

これらを踏まえた上で、原発のいまについてお話しします。
一つ目は東電福島原発事故とは何であったのかの振り返りです。
二つ目に放射能汚染水問題の核心と現状についてお話しします。
三つ目にそれらによってどんな被曝が起きていると考えられるのかについてです。
ここは「放射能からの身の守り方」の核心部分でもあります。

四つ目に「次世代原発」とは何か。そんなもの展望などまったくないこと、原発はオワコンであることをお話しします。
実際にはもはや原子力は風力や太陽光などにまったく太刀打ちできなくなっています。
そんな中でAIが発達して電気需要が伸びるので、原発が必要・・・などというのはまったくの大うそでしかないこともお話しします。

原子力の行き詰まりの図 守田がAI(Genspark)を活用して作成

そしてそれらを踏まえて、営業運転を開始した東電柏崎刈羽原発の危険性を暴き、最後にこの流れを逆転し、脱原発の道を切り開く方法、そこに大きな可能性があることを示します。
みなさま。ぜひご参加を!

原発輸出もすべて止めた トルコにて

主催者の了解を得られれば、FacebookでLive配信も行いますので楽しみにしていてください!

#放射能からの身の守り方 #原爆と原発 #エネルギー問題 #福島原発事故 #放射能汚染水 #次世代原発 #AIと原発 #脱原発の可能性 #原発再稼働反対

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
💰 活動継続のため、カンパでお支えいただけたら嬉しいです
ゆうちょ 14490-22666151 モリタトシヤ

http://Paypal https://www.paypal.com/paypalme/toshikyoto/1000