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それでも、核燃料サイクルを推進してはいけない根本的な理由――プルトニウムを取り出してはいけない(連載フランスの核燃料サイクルのいま─その9)

守田です(20261020 0:30)

連載フランスの核燃料サイクルのいま─その9をお届けします。

前回は、原子力大国フランスの公的機関ですら指摘している、核燃料サイクルの無理を10項目にまとめました。新しいプールの日程、古い工場の老朽化、増え続けるプルトニウム。在庫と施設を維持するだけでも、深刻な問題を抱えています。

しかし、この連載の最後に示したいのは、技術や採算の問題が解けても、核燃料サイクルを進めてはいけないという点です。未来世代に同意なく危険と負担を押しつける。その行為自体が、倫理的に許されません。
これは、現在のウラン燃料による原子力発電にも共通する問題です。

「STOP AVAL du FUTUR」のバナーを掲げ、CRILANの皆さんと。フランスでも、日本でも、再処理を止めるために 20260705

● 第1章 「できない」から、ではない。「やってはいけない」のだ

この連載を通じ、核燃料サイクルが、あまりに無理なものであることを明らかにしてきました。しかし私は、ここで議論を終わらせてはいけないと考えています。

「技術的に難しいからやめよ」「高くつくからやめよ」という批判は正しい。けれどもそれだけだと、「では技術ができたら、安くなったら、やってよいのか」という問いが残ります。
答えは、断じて否です。核燃料サイクルは、たとえ完成できたとしても、やってはいけないものなのです。その理由を四つあげます。

1.時間に対する責任を、誰も負えない

前回、プルトニウム239の半減期が2万4,110年であることを見ました。それだけではありません。プルトニウム241は約14年の半減期でアメリシウム241に変わり、そのアメリシウム241の半減期は約433年です。
分離プルトニウムにアメリシウムがたまると、放射線防護や発熱への対応が難しくなります。前回紹介したように、ASNRは、一部の工程で物質を扱う技術上の限界に「すでに達しているか、近づいている」と警告しています。

それにそもそも人類が文字を持ってから、まだ5,000年ほどしか経っていません。プルトニウム239がやっと半減した2万4,110年後に、いまの国家も言語も残っているなどとは誰も保証できません。

再処理とは、使用済燃料という固まりの中に閉じ込められていたプルトニウムを、わざわざ取り出し、扱える形にする作業です。
取り出したものは、燃やしきれなければ溜まります。実際にフランスでは溜まり続け、ラ・アーグに90トンを超えて置かれています。再処理で取り出す量と、燃料として消費する量の釣り合いが取れず、在庫が増えている。その在庫を抱えながら、さらに取り出し続けようとしているのです。

いまの世代が電気を使うために、何百世代も先の人々に管理の責任を負わせ続ける。その人々は、この決定に一切関わっていません。同意を得ることもできません。そもそも作られた電気もまったく使えません。
これは技術の問題ではなく、倫理の問題です。そんなことをしてはいけないのです。

2.毎日の運転そのものが、海と空を汚している

再処理は、事故が起きなくても放射能を出します。使用済燃料を切り刻み、硝酸に溶かすからです。

経済産業省が福島の処理水問題で示した資料には、ラ・アーグ再処理施設のトリチウム放出量が載っています。2015年に、液体で約1京3,700兆ベクレル、気体で約78兆ベクレル。
同じ資料で、福島第一原発のタンクにたまっている処理水のトリチウム総量は約860兆ベクレル(2020年3月時点)とされています。
ラ・アーグは、福島のタンク全体の十数倍のトリチウムを、一年で海に出していたことになります(数値はいずれも同資料による。比較は筆者の計算)。

日本政府はこの数字を、「海外ではもっと出している」と処理水放出を正当化するために使いました。しかし本当に問われるべきは、その「海外」で何が起きているかです。

北東大西洋の海洋汚染を防ぐOSPAR条約の加盟国は、1998年のシントラ宣言で、人工放射性物質の海中濃度を「ゼロに近づける」こと、しかも2020年までにそうすることに合意しました。フランスもその一員です。
ところがフランスの市民放射能監視団体ACROは、2021年の声明でこう報告しています。ラ・アーグ由来のヨウ素129は英仏海峡の沿岸全域の海藻から検出され、2021年夏にはデンマーク国境付近でも検出された。その濃度は年とともに下がっていない。トリチウムの放出は、シントラ宣言以来むしろ急増している。ヨウ素129などの放出を減らす技術は他の国で使われているのに、Oranoは導入していない。

人工放射性物質の海中濃度を「ゼロに近づける」という約束の期限は過ぎました。Aval du futurは、この放出をさらに2100年以降まで続けるための計画です。

3.プルトニウムは、核兵器の材料である

ラ・アーグの再処理工場(UP2)は、核兵器のためのプルトニウムを得ることを目的の一つとして生まれました。フランス原子力庁(CEA)は1970年の資料で、1959年に建設を決めた理由を三つ挙げています。
①マルクールの最初の再処理工場UP1が故障したときの備え
②フランス電力(EDF)の発電炉から出る使用済燃料の再処理
③EDFの原子炉から得られる追加のプルトニウムを軍事計画に供給すること

UP2は、発電炉の燃料から軍用のプルトニウムを取り出す、はじめから軍民両用の工場でした。民生へ軸足を移したのは1969年からです。取り出す技術そのものは、いまも同じです。
民生用の再処理で取り出されるプルトニウムも、核爆発を起こしうる物質であることに変わりはありません。だから国際原子力機関(IAEA)の保障措置のもとで、厳重な計量と監視が求められています。

分離プルトニウムを大量に持ち、それを毎年動かし、輸送し、加工し続けることは、それ自体が核拡散と核テロの危険を世界に増やし続けることです。
分離プルトニウムを持たない国が、それを取り出す技術を持とうとするとき、「フランスも日本もやっている」という前例が持ち出されうるのです。

私たちが押さえておかなければならないことは、アメリカが広島・長崎で原爆による大量虐殺を行って以降、旧ソ連をはじめいくつかの国が核開発を行い、核攻撃可能な国となることの中で、これまで核戦争寸前の事態が何度もあったということです。
例えば朝鮮戦争のとき、アメリカのマッカーサー司令官は、戦局を打開するために原爆の使用を主張しました。マッカーサーは後年のインタビューで、満州の基地などに30〜50発の原爆を投下し、放射性コバルトの帯で朝鮮半島の北側を遮断する構想を語っています。実行されなかったとはいえ、軍の最高指揮官が、このような放射能汚染による戦争を構想していたのです。

さらに米ソの間では、相手からの攻撃を誤って知らせる警報や、核兵器の使用に踏み切りかける事態が繰り返されました。1962年のキューバ危機では、ソ連潜水艦B59の艦長が核魚雷を使いかけました。1983年には、ソ連の早期警戒システムが米国のミサイル発射を誤って検知しましたが、当直のペトロフ中佐は誤警報と判断しました。核戦争の危険は、机上の想定ではありません。私たちは、人間の判断や偶然に破局の回避を委ねる危険な状態を、何度もくぐり抜けてきたのです。

これらを考えた時に、技術的にできるかどうか、採算が合うかどうか以前に、プルトニウムを取り出すこと自体が、平和に対しても、環境に対しても、未来に対しても、責任を取れない行為なのです。
だから絶対にやめさせなければいけない。それは私たち、核時代に生きるものにとっての責務だと私は思います。

4.ウランによる発電もやめなければならない

この点ではいま行われている原子力発電も同じです。原子炉でウラン燃料を使えば、核分裂生成物やプルトニウムなどを含む使用済燃料が残ります。資源エネルギー庁の資料でも、使用済燃料を直接処分する場合、その潜在的有害度が、発電に必要だった天然ウランと同等になるまで約10万年を要すると試算されています。電気を使うのはいまの私たちなのに、その後の危険と負担を、遠い未来の人々に残すのです。

図1 恩恵は偏り、危険と負担は国境と世代を越える

しかもウラン濃縮技術も、核兵器と切り離せません。発電用の低濃縮にとどまらず、高濃縮へ進めば、核兵器に使える物質を得られるからです。実際に広島原爆はこの方式で作られました。
このためウランを採掘し、燃料に加工する段階から、核兵器使用の恐怖は始まるし、それが原子炉で燃やされれば燃やされるだけ、未来世代に送る放射能量は増えていくのです。
そんなことがたったいまも世界の主要工業国で行われ続けている。未来世代への暴力が毎日、振るわれ続けている。この状態を止めましょう。

ウランもプルトニウムも使ってはならないのです!それがこの連載の最後に、強く確認しておかなければならないことです。

● 第1章の出典


● 第2章 日本の使用済燃料が、この計画を支えている

Aval du futurは、日本にとって対岸の火事ではありません。

ラ・アーグ再処理施設のUP3。日本が再処理を委託してきた ラ・アーグを訪ねて
 守田撮影 20260705

2026年1月20日、Oranoは日本の使用済燃料再処理・廃炉推進機構(NuRO)と契約を結びました。関西電力の原子炉から出た約200トンの使用済燃料をフランスで再処理する契約です。
日仏両政府は3月25日に交換公文を交わし、この契約を認めました。Oranoのプレスリリースは、この契約が「使用済MOX燃料の再処理実証に関する二国間研究の進展に寄与する」と明記しています。

同じプレスリリースで、Oranoの幹部はこの契約を「日本で使用済MOX燃料の再処理技術が確立されるまでの、責任ある効果的な解決策」と呼んでいます。
日本には、自分の使用済MOXを再処理する技術がない。推進側自身がそう言っているのです。

日本はラ・アーグの大口の客でもあります。Oranoのデータを引くGlobal Chanceによれば、2024年末までにラ・アーグで再処理された軽水炉燃料4万1,236トンのうち、7.1%が日本の電力会社の分です。外国の顧客ではドイツに次いで2番目です。
そして日本の原子力企業はOranoの株主でもあります。2024年10月のOranoの発表によれば、Oranoの資本の90.33%をフランス国家が、残りを日本原燃(JNFL)と三菱重工(MHI)が4.83%ずつ持っています。

日本自身の現状も見ておきます。内閣府の報告では、2025年末時点で日本が保有する分離プルトニウムは44.4トン。そのうち12.8トンがフランスにあります。
六ヶ所再処理工場は、1993年の着工から完成目標を27回延期してきました。現在の「2026年度中」も守れない可能性が報じられており、遅れれば28回目の延期になります。

つまり日本は、国内で使用済MOX燃料の再処理技術を確立できていないまま、フランスでの実証研究に依存しています。その契約を、Oranoは再処理事業の有効性を示すものとして宣伝しています。日本は顧客として、そして日本企業の出資を通じて、フランスの再処理事業を支える側にいるのです。逆に言えば、日本は、顧客として再処理を支えるのをやめることができる。そうすればこの計画の前提の一つが崩れます。日本の私たちは、フランスの計画を止める側に立つことができるのです。

図2 行き先のない使用済MOX(日仏の重なり)

● 第2章の出典

 

● 結章 この計画は、止められる

Aval du futurは、すでに決まったことのように語られています。大統領が主宰する核政策会議が承認し、「大工事(グラン・シャンティエ)」のラベルも貼られました。政府は2026年8月に調整官を任命し、調整官は9月1日に着任しています。

しかし、決まっていないことのほうがはるかに多いのです。
Oranoの説明では、国民討論委員会(CNDP)での公的討論が2027〜2028年、最終投資決定は2030年です。環境影響評価は、Oranoによれば「まだ実施されていない」。総額は「評価中」。資金協定の細目は、2026年末までにまとめるよう求められている段階です。

この計画の前には、少なくとも三つの関門があります。公的討論、ASNRによる設置の審査、そして最終投資決定です。私たちは、これらの場で前回の10の指摘を突きつけ、問題を残したまま計画を進めさせてはなりません。

問いはすでに立てられています。Global Chanceは2026年7月の分析をこう結んでいます。「Aval du futur計画は放棄されなければならない」「再処理の最終的な停止が必要である」。
そして代わりに、使用済燃料を再処理せず、安全な施設で乾式貯蔵することを提案しています。地元でも、2025年7月19日、ラ・アーグに近いヴォーヴィルで、計画に反対する人々が行進しました。参加者は報道により約700人から約1,000人です。
ただし乾式貯蔵を選ぶ場合も、立地、輸送、容器の劣化、長期の管理体制などを検討しなければなりません。再処理をやめることと、残された使用済燃料をどう管理するかは、分けて考える必要があります。

フランスは再処理を手放さない原子力大国だと思われています。しかしその国の中で、規制当局が「余裕がない」と書き、国の評価委員会が「不確実だ」と書き、地元情報委員会の全国組織が「サイクルと呼ぶな」と言っているのです。
フランスでも、この道はまったくうまくいっていません。そもそもたったいまのフランスは物価高で庶民が生活に困っています。教育予算が大きく削られ、公立学校でトイレすらまともに完備されていない学校があるほどです。
無展望な核燃料サイクルに巨額を投じるのではなく、市民の暮らしや公教育にこそ資金を使うべきです。

そして私たちはここで、単にうまくいっていないからやめるべきなのではないことを強調する必要があります。
繰り返します。プルトニウムを取り出し、溜め、海に放射能を流し、何万年、いや十万年以上も管理の責任を未来に押しつけることなど、絶対にやってはいけないことなのです。だからやめなければならないのです。だからやめるのです。

核燃料サイクルに未来はありません。プルトニウムは、取り出してはいけなかったのです。ウランは掘り出してはいけなかったのです。
いま必要なのは、この先送りの施設を建てることではなく、再処理をやめ、これ以上プルトニウムを取り出さないと決めること。そして原子力を終わりにすることです。フランスでも、日本でも。両国市民の連帯のもとに。

● 結章の出典

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